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エッセイ・コンクール

第2回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

最優秀賞

元気な親父とじいさんを目指して 古家茂臣【熊本県】

 私は五十五才、現在一才の男児の父親である。別にやっと子どもができたわけではない。実は再婚で、前妻との間に二十四才を頭に四人の子どもがいるのだが、これまで「子どもは水さえやっとけば自然に育つ」という考えだった私は、生まれて初めて父親として役割を持った子育てをすることになってしまった。
 二十数年前、私の最初の父親時代の話、前妻が子育てのため家で忙殺されていても、私は、ほとんど毎日の様に外で飲んでいた。男なんか子育てには何の役にも立たない。日本男児たるもの、子育てには口も出さないが、手も出してはいけないと信じていたからだ。そして最初の結婚での子どもたちも、成人し、巣立つと同時に、教育上の方針の違いから、妻も私の元を去って行った。家庭を失って初めて、そのありがたみが分かったのだが、時既に遅しで、私は一人になってしまった。
 こうした失敗を反省し、今度こそ、ちゃんと子育てもきちんとやりたいと思っていたが、その思いが神に通じたのか、五十才過ぎてから、今の妻と再婚、長男にも恵まれた。まさに敗者復活戦である。
 だが、妻は私より十七才年下で、「おとこたるもの子育てには……」なんていう考えはまるで通じなく、子育ては夫婦一緒にやって当たり前という考え方なので、私は今風の子育てをすることになってしまった。
 妻は、体がきゃしゃで、余り体力がないせいか、専業主婦なのに家事が苦手、彼女は手伝いはするが、基本的に私が中心となり家事・育児をこなしている。
 料理は元々得意だったので苦にはならないが、息子の夜泣きには少々まいっている。前の子どもの時は、「うるさい、明日仕事にならない!」と言って、隣の部屋で寝たものだが、今回はそうはいかない。泣き続ける息子を「こちらが泣きたいよ!」と思い、眠りかぶりながらあやしている。「抱いたら抱き癖がつく」なんて言う人もいるけれど、そんなの迷信だと思う。どんな泣いている子も、愛情を持って抱き続ければ泣き止むものだ。
 息子が病気したら、休みをとって、病院へ行くし、市役所が実施する父と子どもの交流プログラムでは若いお父さんと一緒に頑張っている。この年になるまで、あまり関心が無かったのだが、子育て支援の仕組みがハード、ソフト共に社会には沢山あり、便利で心強くなっている。児童館や保健センターの利用から、各子育て支援のセミナー等、このベテランだけど新人の父親には非常に役にたっている。
 しかし、前妻との間の成人した子どもの成長過程を考えると、まだまだ先が長いことが経験上、分かっており、気が遠くなる。ゴールと思ったら、また走れと言われたマラソンのようなもので、「この子が成人する頃は俺も七十代の後期高齢者か」と思うと、少々不安もある。
 それでも、最近、息子は私を後追いするし、毎日はいる風呂での仕草も可愛くて仕方がない。年とった親父だが、この子にとっては一人だけの親父である。
 親子なんてたまたま、同じ船に乗り合わせただけかもしれないが、乗った以上は力を合わせて生きて行かなければならない。私も息子から元気をもらっているので、あと半世紀は生きる覚悟で頑張りたい。最近、妻の知人からは「お父さんですね、いつもお世話になってます」とか、私の知人からは「孫は可愛いでしょう」とか言われ、恥ずかしい思いもしているが、そんなの関係ない。息子のために「じいさんだけど元気な親父になるぞ!!」

【受賞の言葉】
 児童相談所で親と離れて暮らす子どもに接していますが、親の立場からは、何気ない子どもとの生活がいかに幸せかということを実感しています。二度目の子育て中の私の例はモデルケースにはなりえませんが、若い女性だけが子育てをしているのではないと主張したくて応募しました。受賞は大変光栄です。


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