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エッセイ・コンクール

第4回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

内閣府特命担当大臣(少子化対策)賞・最優秀賞

魔法の呪文 佐藤奈津紀【山形県】

 「ダメ!」これが私の口癖だった。何かを口に入れようとすれば「(汚いから)ダメ!」、おもちゃをいっぱい出そうとすれば「(散らかるから)ダメ!」、甘いお菓子を食べようとすれば「(体に悪いから)ダメ!」。子どもたちが大きくなるにつれ、いたずら盛りに益々「ダメ」は多くなっていった。子どもたちは反抗してかんしゃくを起こすようになり、思うようにならない私もイライラばかりしていた。4人兄弟で喧嘩もしょっちゅう。「こら!仲良くしなきゃダメだべ!」「弟妹に優しくしろ!」私は怒鳴ってばかり。転んだりぶつかって泣いても「そんなのたいしたことね!痛くないべ!」って威勢よく励ました。
 そんな私とは正反対に、ばあば(義母)は、子どもたちが何をやっても何を言っても「んだがあ(そっかあ)」と言って、子どものいうことを聞いている。転んで泣いてる子どもには「痛がったべえ。よしよし」とフーフー息を吹きかける。私はそんなばあばを見て、「なんでやってよくないことをやらせるんだ」「子どもを甘やかして」と、憤りを覚えていた。
 ある日、主人も小さい頃お世話になった習字教室に、娘も通うことになり、あいさつをしに行った時のこと。先生に主人の幼い頃の話を聞いた。「純君(主人)や、純君の兄弟みんな、とっても心が優しくて、ほんと、由子ちゃん(ばあば)は子育て名人だ。」この最後の一言に、私ははっとした。優しい主人を育てたのは、ばあばなんだ。初めてばあばを「先輩ママ」として見た瞬間だった。「優しくなりなさい!」と怒ったところで、優しい心なんか育つわけがない。「痛かったね」と共感してあげるからこそ、人の痛みのわかる子に育つのだ。今まで私は、子どもたちの色々なマイナスの行動や気持ちを全部「ダメ!」で押しつぶし、痛いと泣く子を「痛くない!」って否定してきてしまった。反省と後悔の気持ちでいっぱいになった。同時にばあばへの感謝の気持ちがあふれてきた。ばあばは、いつもにこにこして「んだがあ」ってうなずいて話を聞いてくれる。それだけで、どんなに子どもたちの気持ちが救われていたか。ばあばを見習おう。私もばあばみたいな優しいママになりたい。すぐにはなれないだろうから、とりあえず、「ダメ!」の代わりに「んだがあ」って言ってみよう。
 あれから約1年が経った。今では「んだがあ」が私の口癖だ。「んだがあ」って口に出すと、自然と優しい気持ちになる。まるで、魔法の呪文みたい。まだまだ「こら〜!」と大声を出すこともあるけれど、私は「優しいママ」へと前進を続けている。「先輩ママ」ばあばへの尊敬と感謝の気持ちを持ちながら。

【受賞の言葉】
 ガミガミ怒ってばかりのママからニコニコ優しいママに変わろうとしたことで、子供たちの笑顔が増え、子育てが楽しくなったばかりか、このような素晴らしい賞までいただいてしまいました。子供たちに言わせると私はまだまだ怒りんぼママです。でも、「あ、また怒っちゃった」と笑える自分がちょっと好きです。優しい家族とかわいい子供たちのおかげで今の自分があります。心から感謝です。これからも優しいママ目指して頑張ります。


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