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エッセイ・コンクール

第4回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

最優秀賞

“ぼくのお庭”から広がる地域の輪 千葉美奈子【栃木県】

 「ただいまぁ!」
今日も汗びっしょりになって小学六年生の息子が学校から帰ってきた。家に上がりもせずに、ランドセルを玄関に置いてすぐにまた外に出ていってしまう。息子がシャワーを浴びることよりも、おやつよりも先にするのが、植物の世話なのだ。だいたい毎日一時間近くかけて、水やりをしたり、肥料をやったり、植え替えをしたり、枯れている葉や花を取り除いたり、といった地味な作業を、鼻歌まじりにいかにも楽しそうにやっている。
 息子がこんな風に植物の世話に夢中になったのも、百パーセント、一緒に住んでいる母の影響だろう。私は仕事の都合で息子が一才になった日から働きはじめ、それから息子はおばあちゃんとべったりの日々。よちよち歩きの息子を連れてのお散歩は、近所の庭先の植物の説明つき。庭での遊びといえば植物の水やりなどの世話をお手伝いすること。そんな風だったから、今や園芸についての知識や作業のやり方は、他の小学生からは群を抜いて高いと思われるのだ。
 家の庭をリフォームすることになった際、「『ぼくのお庭』をちょうだい!」
とおねだりした。十二歳の息子は岩ヒバや山野草…決して派手ではない植物を育てている。
 そんな時、地域の「山野草の会」の展示会があった。山野草の寄せ植えを観賞しながら「すごぉい!これは繁殖が難しいのに…。」
感嘆の声を上げて興味津々でいる息子に、会のおじいちゃんが近寄ってきて
「ぼうやは山野草のこと詳しいんだね。」
とそれから意気投合し、会のほとんどのおじいちゃんおばあちゃんと顔見知りになった。
 息子が庭で作業をしている時に会のおじいちゃんたちが山野草を持ってきてくれることがある。そして楽しそうに植え方や育て方を話し始めるのだ。その会話の端々に
「いやぁ、大したもんだねぇ!」
「将来がえらい楽しみだなぁ!」
などと、くすぐったくなるようなお褒めの言葉をいただくものだから、息子も俄然やる気が出てしまう訳だ。近所への挨拶や正しく道路を歩くなど生活態度も良好に。すると
「いつも挨拶が気持ちよくて、嬉しいね。」
とまたまた思わぬ褒め言葉。そして、息子の登下校時に玄関先に立っていてくれる様に。「地域の力で、地域の子を犯罪から守り育てていく」ということは、こういうことなのだな…と思った。なんと、極めてシンプル!
 私の母も下校時刻ごろには庭先に出て「おかえりなさい。」などと近所の子ども達に声をかけるようにしている。自分から挨拶をくれた子には「えらいね。」と言ってあげると、すごく嬉しそうな顔をするそうだ。翌日からは更に元気に笑顔で「こんにちは。」…とっても素敵なことだと思う。この地域には地域の力で育てられた、いい子が育っていますよ!

【受賞の言葉】
 気付けば息子も12歳。この子の心のアルバムは、多くの方々の温かい笑顔でいっぱいです。私たち親子だけでは、こんな穏やかな優しい子には育たなかったでしょう。生命の尊さのわかる豊かな心を祖父母や地域の方たちとのふれあいや体験を通して育んでいただきました。陽だまりのような居心地の良い地域に私たちは住んでいます。その感謝の気持ちを書きました。このような高い評価をいただき本当に光栄です。ありがとうございました。


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