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エッセイ・コンクール

第5回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

内閣府特命担当大臣(少子化対策)・最優秀賞

子育ての功名争い 田上直志【栃木県】

「よーく見ておくんだぞお。大きくなったらパパみたいに洗濯ものを干すんだからな」
 七歳の長男と五歳の次男に言い聞かせながら洗濯物を干す。一歳になる三男の食事介助やオムツ替えの時などは、
「こんなこともパパになったら、しなくちゃあいけないんだ。でも、出来るかなあ」
と挑発的な言葉を投げかける。
「うーん。多分出来ると思うけど……」
と二人とも一応は答えてくれる。将来この子たちが父親になった時、家事や育児をどこまでするのだろうか。
「ほーら、元気な泣き声だねえ。いいかあ、赤ちゃんは泣くのが仕事なんだぞお」
 三男が泣き叫んでぐずる時、勘弁してくれと思うことがある。けれども、長男たちに聞こえる様に『赤ちゃんは泣くのがお仕事』と口にしては、微笑んでみせる。将来この子たちが父親になった時、泣いてぐずる赤ちゃんを、笑って見守ることができるだろうか。
 こんな風に、父親だって育児や家事を行い子どもは泣いてぐずる存在だということを伝えている。子育ては楽しい面だけでなく、大変な面もあるということを。そんな私の姿を見て、将来、我が家の子ども達は、一体どんな子育てをするのだろうか。
 その答えを垣間見る出来事があった。それは妻が夜勤で不在の晩の日のことだった。
 私はいつものように子ども達を布団に寝かせた。ウトウトし始めると三男が夜泣きを始める。一階にかけ降り、ミルクを作ると二階にかけあがり哺乳瓶を与える。これを二度ほど繰り返す。これで安心して熟睡できるはずだった。けれどもこの日は突然の悲劇が襲ってきた。安心しきって爆睡している私の顔に寝相の悪い次男の足が勢いつけて何発も落ちてきたのだ。寝場所を替え、ウトウトし始めると今度は長男の足が私の腹の上に落ちてくる。こんな事を繰り返しているうちにすでに朝の四時近く。少しでも眠っておこうと再度布団に入ると、計算外の三男の朝泣き。もう動けない。私は頭の中で『子どもは泣くのが仕事』と言い聞かせ、眠りに入る。ところが突然、朝泣きがピタリと止んだのだ。泣かれるのも困るが、何もしてないのに泣きやまれるのも、やはり気になる。眠気が一気にふっとんで、三男を見た。と、そこには両手で長男の顔にしがみつく三男と、両手で三男の体を抱きかかえている長男の姿があった。
 この話を、後日子ども達に話すと、長男は覚えていないと言いながらも、手を叩いて大喜びし、次男は手柄をあげられなかった事に地団太を踏んで悔しがっていた。我が家の子育てプロジェクトもまんざらでもないのかなぁ。子育ての大変な面を功名争いする子ども達を見て、やんわりと期待をしてみる。

【受賞の言葉】
 三男の夜泣きのため毎日眠りも浅く、寝不足です。ところが最近、夜泣きだけでなく笑い声もあげるようになりました。どんな楽しい夢を見ているのかと考えると、今度は嬉しくて眠れなくなりました。
「子育ては大変な面と楽しい面がある」と本文で書きましたが、少しだけ、この場を借りて訂正させてください。「子育ては大変だからこそ楽しい」と。これからも息子たちと共に、子育てを楽しみたいです。


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