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女性研究者への支援

第2回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

野澤暁子【名古屋大学 文学研究科総合人文学コース博士課程後期】

「主婦はいない」バリ島の育児生活における歌の役割 〜男性中心の音楽文化で母から子へ伝承されるもの〜

 伝統音楽「ガムラン」で有名なインドネシア・バリ島では、楽器演奏は慣習的に男性の文化とされています。そこで、本研究は、女性たちのもつ「歌」という音楽文化に着目しました。特に、子守唄や童謡を取り上げ、育児を通じて母から子へ伝承される感性や、人の成長過程における歌の価値を考察します。また、バリの女性は男性と同等に働きながら、家事・育児をも担っています。生活様式の観察から、バリの育児文化の特徴についても明らかにしたいと思います。

【受賞の言葉】
 今回は本当にありがとうございました。この受賞は何より、これまで母親のバリ島現地調査に同行し、異文化の環境で頑張った子どもたち(長男・5歳、次男・10 カ月)の功績です。研究と育児を支えてくれる全ての人々に感謝するとともに、子どもたちのパワーに負けない魅力的な成果を出せるよう、尽力したいと思います。

受賞後の様子

「子どもたちはバリの人々から多くのことを学びました」  受賞時に幼稚園年中組だった長男は年長組に進級し、精神的にかなり自立した様子です。 助成金を使用し、昨年7月から2ヵ月間バリ島でフィールドワークを実施しました。このフィールドワークには6歳の長男と1歳半の次男も同行しました。バリ島滞在時、2人の息子は多くの大人たちにかわいがられ、地元の友だちもたくさんできました。バリの人々の思いやりや、子どもたちのたくましさ、そして「分かち合いの精神」を、彼らなりに吸収しているように感じています。こうした子どもたちの成長もフィールドワークの成果の一つであるように思っています。  私と子どもたちの写真が新聞に掲載されたことで、家族や大学の先生方・仲間が大変喜んでくれました。また、これまでに増して、周囲の人々が、私の研究を後押ししてくれるようになりました。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 「普通は《子供がいるから、できない》という母親が多い。でもあなたはそれを、《子供がいるからこそ、できる》という発想に変えた。」―これは、私の知人である女性研究者から言われた言葉ですが、何よりも嬉しい一言でした。私が専門とする人類学は、現地調査を必要とします。これが子をもつ女性研究者を悩ませている点です。しかし、母親だからこそ現地調査で発揮できる視点があることを周囲にアピールできたことが、本助成によって得られた最大の成果と思っています。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 研究のためのインドネシア滞在時の経験は二人の息子にとって強烈な記憶となっているようです。最近印象的だったのは、長男がふと「バリでトゥデ(現地の友達)たちと、一つのお皿を分け合って食べたよね。ぼくたち、みんな兄弟みたいだったね」と笑いながら言ったことです。日本でもこんな打ち解けた付き合いがあれば素晴らしいと思います。いまの日本だからこそ、バリの農村社会から学びうることが、限りなくあるように思います。
◆女性研究者の環境改善
 各大学に費用の安い託児所があれば、大変助かると思います。私の大学にも託児所がありますが、これは常勤職の人しか利用できず、費用も私立の託児所並みというのが実際です。もっと多くの女性研究者が利用でき、かつ経済的負担の少ない託児所を設置することができれば、大学の研究活動はより活発化すると思います。


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