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女性研究者への支援

第3回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

山口 睦【東北大学 東北アジア研究センター】

贈答記録からみる家族とジェンダー:日中比較の文化人類学的研究

 香典帳や祝儀帳などの贈答記録は、日本の家庭において時に数百年間、記録、保存される。そこでは、家父長制、家制度といった観念からはみえない家族の実態、女性の生活とその変化を連続的に捉えることが可能である。本研究では、山形県南陽市のある農家に保存されていた1772 年から2003 年までの贈り物に関する記録を分析する。また、日本より厳格な父系出自集団を形成する中国において文献調査、ならびに現地調査を行う。同じ漢字文化圏である日本と中国の贈り物に関する記録の比較を通して、両国における家族の有り方を分析し、相互理解の一助としたい。

【受賞の言葉】
この度は、助成対象者に選んでいただきまことにありがとうございます。これまで指導してくださった先生方、調査に協力していただいた方々、研究と家庭の両立に理解を示し支えてくれた家族に感謝いたします。博士課程在学中に息子を産んだことを後悔はしていませんが、出産後は、研究をあきらめて子育てに専念した方がよいのではと思うこともあります。この賞によって、子育ても研究も両方あきらめずに頑張ってきたことを認めていただけたと思います。これを励みに、より充実した成果が出せるように頑張っていきたいと思います。

受賞後の様子

福島県いわき市石炭・化石館(2010年6月)  本プロジェクトによる経済的支援により念願の中国調査が叶いましたが、それ以上に、幼い息子を両親に任せて海外調査を行うことについて、精神的な後押しをしていただいたと感じています。海外での調査を行うにあたり、本プロジェクトからの助成を受けた研究計画であることによって、両親からの理解、協力を得やすかったことも事実です。
 研究者として博士課程を修了しても、常勤の職を得られるわけでもなく、大学で研究活動を行っても給料が出るわけではありません。そのような状況の中であっても、子どもを保育園に預けたり、両親に面倒をみてもらったりしながらも、研究を続けることについて社会的な評価を得ることができたと感じています。
 後輩の既婚の女性研究者には、本プロジェクトについて、安心して子どもを生み、研究と育児を両立していける助成があると、折りに触れ話しています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 本プロジェクトの経済的支援により2010年4月、5月、2011年3月の中国調査がかないました。その際には、母、義母に息子(4歳)の面倒をみてもらいましたが、夫や両親に説明する上で、助成を受けた研究計画であることが理解や協力を得やすく、精神的な後押しにもなったと感じています。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 2010年度は保育園代を助成金から捻出することにより、充実した研究活動が行えました。子育て費用を補助していただけるので、大変有難く、子育てと研究活動の両方をサポートしてもらっていると実感した2年間でした。私自身も息子に研究活動について説明する際に「お母さんは、お仕事だから」と自信をもって言えるようになりました。
◆女性研究者の環境改善
 自身の経験を踏まえて、後輩の既婚の女性研究者に折りに触れこの制度のことを話し、安心して子供を生み、研究と育児を両立していけるとアドバイスしています。特に、文系の研究者は、博士論文を提出するまでに修士課程を含めて10年前後かかるのが一般的であり、ちょうど、結婚、出産の時期と重なります。博士論文か子供か、研究継続か子育てか、という選択を迫られる女性研究者は多いと思います。そんな時に、経済的な子育て支援があれば、研究をあきらめずにすむ女性研究者が増えると思います。女性研究者が、結婚、出産と研究の両立ができるように、このプロジェクトをぜひ継続していただきたいと思います。


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