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女性研究者への支援

第4回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

塩谷 暁代【名古屋大学大学院 文学研究科】

女性が動かすアフリカ・カメルーンの都市-農村地域経済: 女性商人の生活世界と経済的役割に関する人類学的研究

 アフリカ諸国では、植民地からの独立以後、商品経済や都市化が急速にひろがり、経済分野では副次的な家庭経済の担い手としてしか見られなかった女性が都市的な経済活動へ進出している。カメルーン共和国の首都ヤウンデの市場の食料品部門では商人の8割が女性である。彼女たちは生産地の農村女性と深い関係を築き、都市と農村を行き来し、地域経済の仲介的存在となるとともに、新たな経済互助ネットワークを生成している実態が明らかになってきた。本研究は、アフリカ女性の経済活動に注目し、社会経済的役割の変化と、変動著しい地域経済の動態を明らかにすることを目的とした人類学的研究である。

【受賞の言葉】
 このたびの受賞は、大きな励みとなりました。4人の子どもに恵まれ、子育てから学んだことが研究を深める経験になっていると感じつつ、実際に両立していくのは困難とそれを乗り越える工夫の連続です。子育ても研究もひとりでできることではなく、周囲の支えがあって続けてこられたと感じています。みなさまに心より感謝申し上げ、社会を明るくする一助となるような研究をめざしたいと思います。

受賞後の様子

 4月に夫が緊急入院、私自身も3度にわたり耳の手術を受けるなど、まさに困難に見舞われながらのスタートとなりました。ですが、下の二人の子どもたちが保育園に通うようになったことで、研究に費やすことのできる時間は大幅に増えました。加えて、小学校に通う長男と次男は「お母さんは研究が仕事だ」ということを理解してくれたようで、今では家事も分担して手伝ってくれます。家族はこれまでもとても協力的でしたが、受賞を機に、社会的にも評価された「仕事」として研究に携わることに対してますます理解を示してくれるようになりました。これまでのカメルーン現地調査を踏まえて、10月には国際シンポジウムにおいて研究発表を行いましたが、引き続き、調査の成果を論文としてまとめたいと思っています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 助成を受けたことにより、出産育児のため11年間中断していた現地調査を再開することができました。このことにより、以前に行った調査結果を有効に活かすことができ、研究を進めることができました。また、「研究を支援していただいている」という自覚と自信、責任感をもてるようになり、これまで諦めかけていた博士論文の執筆に対する熱意と決意が生まれました。さらに、学会での発表が評価され研究員として職を得ることもできました。今後も研究を続けていく環境に恵まれたことは、この2年間の大きな成果と喜びです。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 この2年間で子どもたちは大きく成長しました。家事の手伝いはもちろん、「疲れているのだから早く寝たら」「いつものお母さんでいいんだよ」などと日々励ましてくれ、家族がいるからこそ頑張れるということを痛感しています。加えて、この2年間で周囲(父母、地域)の方から研究に対するご理解をいただけるようになりつつあります。子どもは家庭の中だけで育つのではなく、周囲の方々に見守られることで育っていきます。研究を続ける上で、周囲の理解が絶対的に必要であることを感じるとともに、研究の成果を世の中に還元するためにも、説明責任を果たし、日常的なコミュニケーションを重ねていきたいと思います。
◆女性研究者の環境改善
 大学等の研究機関で職を得るには、教歴があることが必要条件のひとつとなっており、教歴のスタートとして非常勤講師に就くというのが一般的です。非常勤講師の就業機会は、大学内の人的つながりによって紹介されることが多いですが、一度家庭に入りその後研究を再開した女性にはこのつながりのない人が多くいます。また、公募を通じた就職はさらに厳しいのが現状です。このような雇用形態が、広く公正な選考のうえで就業機会を得られるような体制になることを心から願っています。


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