スミセイ“Vitality Action”

住友生命

Column

vol.2

 仲間とカラダを動かすといいことがいっぱい

誰かと一緒に行う運動が心と体の健康保持に効果的だという研究を
行っている筑波大学の武田文教授にお話を伺いました。

武田 文さん(たけだ・ふみ)

筑波大学体育系教授/保健学博士

専門分野:健康社会学、
健康教育学、公衆衛生学

武田先生の研究はどのようなものですか。

武田文(以下武田)厚生労働省が行った「中高年者縦断調査」の全国データを用いて、50〜59歳の中年者の余暇活動や社会活動、つまり「趣味・教養」「運動・スポーツ」「地域行事」「子育て支援・教育・文化」「高齢者支援」の5項目の活動が、5年後のメンタルヘルスや日常生活動作の保持にどう影響を及ぼすかについて解析を行いました。

今、話題のビッグデータを用いた解析を行ったわけですね。

武田はい。データは2005年に行った第1回調査と、5年後の2010年に行った第6回調査を用いました。

どういうことが分かったのでしょうか。

武田面白い結果が出ました。「運動・スポーツ」を行っている人の中で、他者と一緒に行っている場合に、5年後のメンタルヘルスと日常生活動作の保持効果がみられた、ということです。一人で実施する場合には、必ずしも効果が見られるとは限りませんでした。

一人でウオーキングやトレーニングをしている人よりも、
仲間や家族と一緒に運動している人に効果が見られた、というのは興味深いですね。
どのような理由が考えられるのでしょうか。

武田誰かと一緒に運動する場合には、人との交流やコミュニケーションが生まれます。このことがメンタルヘルスに良い影響を及ぼすと考えられます。また、テニスや卓球など対戦型のスポーツは、相手のプレーに瞬間的に対応しなければならず、体の動かし方が一人でする運動とは違うことが、身体機能の保持につながるのではないかと考えられます。さらに、対戦型のスポーツでなくても、ウオーキングなどを誰かと一緒にすることによって、楽しみや意欲、相手への配慮などが出て、運動習慣を継続しやすくなることも考えられます。

確かに、一人でやると三日坊主になりがちです。続けることができたとしても、
楽しいというより、生活の中でノルマのような感じにもなりがちですね。

武田そうなんです。同じデータを用いて、運動の継続状況についても調べました。その結果、一人でやっている人よりも、誰かと一緒にやっている人の方が継続していることが分かりました。

誰かと一緒に運動することはいいことづくめですね。

武田人と一緒に運動することで生まれるポジティブな感情によって、脳内に「オキシトシン」という物質が分泌されやすくなります。オキシトシンは、一般には「幸せホルモン」「癒しのホルモン」などといわれ、安心感や信頼感の確立に関係していることが知られています。うつ病の予防につながる、という研究結果もあります。

心と体の健康は密接な関係にありますよね。

武田メンタルヘルスは非常に重要です。うつやひきこもりなど、メンタルヘルスに問題があると、外出しなくなり、運動量も少なくなるため、体の健康にも支障が出て、どんどん悪循環に陥ってしまいます。

武田先生が行ったようなこうした研究は、
これまでにされていなかったのでしょうか。

武田高齢者については、余暇活動や社会活動が健康保持に効果を持つことは知られていましたが、中年者におけるこうした活動がメンタルヘルスや日常生活動作の保持に及ぼす効果について、活動内容や実施方法まで含めて全国規模で明らかにしたエビデンスはありませんでした。

運動やスポーツで、特に誰かと一緒にやると効果があるというのは、
若い人にも当てはまるのでしょうか。

武田もちろんです。運動やスポーツは若い頃から続けていた方がいいのは間違いありません。学校であれば体育の授業があり、みんなで体を動かす機会が与えられていますが、社会人になると、自発的に運動することが必要になります。特に最近は、パソコンに向かって仕事をすることが多く、座り過ぎが問題となっています。仕事の合間に体をほぐしたり、エレベーターよりも階段を使うようにするなど、運動を増やす方法はいろいろありますが、楽しみながらやることが大切です。若い世代の方も職場の同僚や家族など、仲間を見つけて楽しみながら体を動かすことが効果的でしょう。若いうちからの運動習慣が、心と体の健康を保持し、結果的に健康寿命を延ばすことにつながります。

今回の解析で分かったことを有効に活用するためには、
どのようなことが必要でしょうか。

武田全国データの解析によるエビデンスから、一人ではなく、人と一緒に運動・スポーツをすることが、中年者の心身の健康保持に有効であることが明らかになりました。したがって、健康寿命の延伸のために、高齢期に入る前のライフステージにある人が、職場や地域で仲間と一緒に手軽に運動やスポーツを実施できるプログラムの開発や環境整備を早急に進めることが望まれます。

健康寿命という言葉を聞く機会が増えました。

武田日本は世界トップの長寿国ですが、日常生活を支障なく過ごすことのできる健康寿命は、平均寿命より10年ほど短いのが現状です。今後、高齢者人口がさらに増加するため、健康寿命を延ばす効果的な健康づくり対策が喫緊の課題になっています。人の心身機能は加齢に伴って低下する傾向にあります。まずは高齢期に入る前の中年期に、心と体の健康水準をできる限り良好に維持しておくことが重要です。

住友生命の独自アンケート調査結果でも
「運度の継続のためには、一緒に運動する相手が必要」との回答が多数!

住友生命が小学生の子どもを持つ2000人(30〜40代の男性1000人、女性1000人)を対象に運動に関する調査を実施した結果、運動を継続するためには、「気軽に運動ができる環境」とともに「一緒に運動する相手」が重要だと考えている人が多くいる実態が浮かびあがりました。

Q運動を続けるために、
必要なことはなんですか?
(複数回答)