社外取締役メッセージ

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社外取締役としてのご自身の役割について、どのようにお考えですか?

IT専門家および経営者の知見を活かし、社外の視点を持ち込むことだと思います。

  社外取締役として私に求められる役割は、「ITの専門家としての立場」「経営者としての経験」「社外からの視点」という三つがあり、なかでも、一つ目のITやデジタル分野の専門家としての立場は、私が果たすべき最大の役割だと認識しています。このため、IT化の推進について、これまでもいろいろな助言や提言をさせていただいておりますが、今回の新型コロナの影響で、非対面営業など、あらゆる面でデジタル化(DX)の重要性が増していることから、IT分野の専門家として果たすべき役割について、従前以上に責任の重さを感じています。

  二つ目の経営経験者としての役割については、自身の経営経験だけでなく、住友生命と同じ指名委員会等設置会社の取締役会議長をはじめ、複数の企業で社外取締役を務めてきた経験を踏まえ、人事戦略や組織マネジメントのあり方などについて、私なりの問題提起やアドバイスをさせていただいています。経営上の苦労は異業種でも共通すると感じることも多く、今まで自分が実践の場で学んできたことをお伝えすることも必要だと思っています。

  三つ目の「社外からの視点」は、内向きになりがちな相互会社において極めて重要なものです。特に最近は社会の持続性に向けて、ESG投資やSDGsなどへの取組みが世界的な課題となっており、巨大な資産を運用する生命保険会社への社会的な期待が高まっています。社外取締役として社会の新しい動きに関心を持ち積極的に情報を入手してガバナンスの向上に貢献していきたいと考えています。

新社長の選任にあたり、指名委員長として意識したことは何ですか?

予見を持たず、必要な資質を持った適任者を幅広い視点で検討しました。

  私が社外取締役に就任した2015年度から、住友生命は指名委員会等設置会社へ移行しており、指名委員会で社長を選任するのは今回が初めてでした。選任にあたっては、初めに社長交代に向けたスケジュールを立て、その後に「次期社長に必要な資質とは何か」という議論に入りました。メンバー全員が認識を共有するうえで、これが最重要テーマとなりました。議論を重ねていくなか、当社の状況などを勘案して、大きく二つの資質に絞り込みました。

  一つは、「橋本前社長が進めてきた改革をスムーズに継承できること」。住友生命という会社はもともとフロンティア精神や改革マインドが旺盛です。そこで、外部からの招聘よりも、むしろ社内の人に良い文化を継承してもらうほうがよいと判断しました。加えて、橋本前社長が打ち出した改革路線をよく理解し、戦略ビジョンを持って、粘り強くリードできる人を選ぶべきという方向でメンバーの考えが一致しました。

  もう一つは、「社会および職員との“共感力”を持っていること」。当社のように、何兆円もの投資能力を持つ企業は、その能力を、いかに社会のために活かしていくかが重要です。そこで求められる“共感力”とは、「社会は何を求めているのか」「そのニーズはどう変化していくのか」ということを敏感に察知できるセンシティビティ、い わば感受性です。また、それは社内で働く人々の意識やニーズに対しても同様。ダイバーシティや働き方改革を立案・遂行する際にも、社員の身になって「共感できる力」 は、これからのリーダーに欠かせない条件といえます。

  そこから候補者を選定する上では、社外の人間として「予見を持たないこと」を強く意識しました。その共通意識をメンバー全員が持った上で、幅広い候補者を挙げ、十分に時間をかけて、直接接点を持てるような機会を作っていただきました。ここまで選ぶプロセスにこだわったことで、納得のゆく結果につながったと思います。

取締役会の実効性に対する評価はいかがでしょうか?

実効性は高いレベルです。今後は取締役の多様性も必要になると感じます。

  当社は、非上場にもかかわらず、指名委員会等設置会社を採用しており、取締役の半数以上にあたる6名が社外取締役となっています。また、指名・報酬・監査の各委員会の委員長はすべて社外取締役が務めており、取締役会の形態については国内トップクラスの水準にあるといえます。また、運営面においても議論がオープンに行われている上に、そこで提案された多くのことが経営に反映されていることも高く評価できます。

  強いて課題を挙げるとすれば、「取締役の多様性」でしょうか。当社は“住友生命「Vitality」”によって、従来の保険ビジネスを土台にして、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」という価値を提供するビジネスにシフトしようとしています。そうなると、生命保険事業の領域が大きく広がるとともに、多様なニーズに応えるきめ細かな視点も必要になってくる。そこで必然的に、取締役会にも幅広く多様な価値観を持った人員構成が問われてくるだろうということです。

  ただし、これは、今すぐに対応すべき喫緊の課題というわけではありません。これから当社が進んでいく先を見据えたときに必要な視点として、今から下準備を始めておくほうが良いのではないかという一つの提案です。

今後の住友生命に期待することは何ですか?

変わり続ける社会環境に対応し、サービスの“質”を追求してほしいと思います。

  生命保険業界に対しては、個人的にずっと保守的なイメージを持っていたのですが、社外取締役になって実態を見ると、当社は変化を恐れない、非常にアグレッシブな会社でした。考え方が非常に先進的であり、固定観念に縛られることなく、新しいことにチャレンジすることを良しとする企業風土がある。そこに、良い意味での意外性、驚きを感じました。そうしたユニークさは商品開発や市場開拓、マーケティング戦略の考え方にもあらわれていると思います。

  国民の平均寿命が伸び、社会環境が変化し続けているなかで、保険に求められるニーズも変わってきています。人生100年時代において、人はただ生きるのではなく、健康で豊かな人生をより長く楽しみたいという欲求が強くなっています。「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」の実現に貢献するサービスの提供は、まさにそうしたニーズに応えるものといえます。発売から3年が経過した「Vitality」が新たな市場を開拓し、その新しい価値観を代表する保険商品となったように、住友生命という会社には、これからも社会の需要を先取りしながら、提供するサービスの“質”の向上にこだわってほしいと思います。