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エッセイ・コンクール

第1回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

厚生労働大臣賞・最優秀賞

育児じゃなくて…育自 中村佑美【大阪府】

 初めての出産だった。病院は居心地がいい。まわりもみんなママで、助産師さんはベテラン応援団。お見舞い客はみんな優しい。
 帰宅してからだ。子育てって大変って聞いていたけど、大変じゃなくて孤独、そう感じたのは。
 銀行にいかなくちゃ。買い物にいかなくちゃ。市役所にいかなくちゃ。
 よし!がんばって用意して、赤ちゃん大丈夫かな?ってドキドキして、やっとたどり着いた。着いてすぐ、しらない人に『あんな小さいのに連れてきて』って言われた。私に聞こえる声で。
 涙がでそうだった。じゃあ、どうすればいいのよ。でも言い返すエネルギーはない。
 帰りのバス。ノンステップじゃない。ベビーカー上げるのに時間がかかっちゃった。みんなの目。はやくしろーっ。
 ああ、そうか。手伝うってなかなか勇気がいるものね。時間にゆとり、ないのね。
 まだあった。独身の友達たちがお祝いに来てくれた。でも、お茶いれようとしたら泣く。話を聞こうとしたら泣く。いままでのようにおもてなしできないの。『ごめんね、バタバタで。』と言うと、『大変ね!、やっぱり赤ちゃんはかわいいけど、私はまだいらないわー。やりたいことできないし。』
 嫌味を言われているわけじゃない。けど、なんだかひとり、寂しく感じた。
 私の赤ちゃん、かわいいし、邪魔に感じたことなんてない。でも世間のみんなが、冷たく接してくるの。何をするのも大変。
 出産を機に仕事をやめて、毎日お世話で、生活が大変になった。疲れちゃったな…
 そんなとき、病院のマタニティヨガに講師で来ていた方が『育児はね、育自。自分を育てるのよ。赤ちゃんを社会に出すために自分を育ててね。やっぱりママはしっかり生きていかなくちゃ。』って、話してくれた。
 あぁ、みんな同じなんだ。ここにいるママさんみんな何かに不安で、辛かったのかな。がんばらなくていいし、色んな嫌なことあるけど、私の赤ちゃん元気だし、かわいいし、それで充分。そう感じた。
 心からそう感じた後、まわりをみると、優しい人はいっぱいいた。
 バスも乗るとき手伝ってくれた。なんとおばあちゃんが。
 銀行の窓口の人も笑顔で可愛いって言ってくれたし。それに、友達が手作りのおもちゃをくれた。
 なんだ、自分が暗く考えたり、落ち込んでただけみたい。やっぱり人に優しくできる人はステキだな。これから育児、いや、育自!がんばろっと。

【受賞の言葉】
 このたびは大変すばらしい賞を頂き、本当にありがとうございます。育児をしている上で悩んだ事、感じた事、そして喜びをそのまま表現しました。その文が表彰されることになり、うれしい思いでいっぱいです。これからも笑顔いっぱい楽しい『育自』を続けていこうと思います。


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