◆研究成果・研究環境の変化
本助成によって、ベビーシッターを利用し、共同研究会に出席できるようになりました。これによって自分の研究に比較的近い研究者、自分の研究に興味を持ってくれる先輩研究者と知り合う機会を得て、今まで孤独で孤立無援だった研究者としての自分に交友が広がったことは、大きな刺激と励ましに繋がりました。
助成1年目、2年目ともに、論文を3本書き、学会などでの口頭発表、出版にも力を入れました。私の2年間の成果が評価され、2016年4月から、国立大学法人 鹿児島大学の学際研究院教育センターに専任講師として着任することになりました。常勤のポストに就任することができ、家庭の経済的な安定を獲得できています。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
受賞により、夫が研究者としての自分を認めてくれるようになり、精神的に非常に楽になりました。「大学教員になれる望みがあるのか?」というセリフを繰り返していた夫でしたが、私の可能性を信じてくれるようになった気がします。
また、子育て費用に助成金をあてることにより移動に新幹線を利用できたので、その分子どもと触れ合う時間が確保できました。娘は5歳になり、仏語と日本語を流暢に話し、今では夫のための簡単な通訳を務めるまでに成長しました。園でも年少の子たちの面倒をよくみていると先生から報告を受けていて、思いやりの心もずいぶんと育ったと感じています。
◆女性研究者の環境改善
授賞式の大日向選考委員のスピーチは、今でも強く印象に残っています。感極まって、泣いてしまい、隣や後ろに座っていた受賞者たちも、みんな同時に泣いており、一緒の想いを共有していたとわかり、うれしく感じました。娘も当時3歳ながら、あの日のことはしっかり覚えているそうです。
安定的なポストを持たず、若い大学生でもない、子どもを持つ「博士課程学生」やポスドク非常勤者は、地方行政者の視点からは、「無職」同等に分類されてしまい、「保育園には入園できません」となってしまいます。
自分のこうした立場を説明できるためにも、そして今後の展望をはかっていくためにも、自分の経験とスキルを整理・可視化できる「アカデミック・ポートフォリオ」を作成することは、女性研究者にとって意義があると思います。
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