◆研究成果・研究環境の変化
1年目に研究会やシンポジウムへ積極的に参加して研究継続の意思を示すことができたことにより、研究者としての停滞期が終了にむかったと感じることができました。よく使用する資料を自宅に買いそろえることができたため、子どもと離れる時間を最小限にしつつ、効率的に勉強を進める基盤ができました。そして、2年目には、日本学術振興会特別研究員に採用され、研究環境は大きく変わりました。それまでの研究員時代は名ばかりでしたが、今は自分の研究時間を確保できるようになりました。成果を出さねばという焦燥感からではなく、学会発表や論文掲載に向き合えるようになりました。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
本助成のおかげで、多くの調査に行くことができました。子ども三人を連れて京都での調査も行えました。炎天下の宇治の調査は子どもの記憶にもよく残っているようで、テレビで宇治平等院鳳凰堂や紫式部の『源氏物語』などが出てくると「ここ行ったね」「このお話、知ってる」と話が盛り上がります。
今まで自分自身が研究者を目指していることはもちろん、大学を卒業していることも子どもたちには話さないでいました。しかし、本助成受賞の授賞式に子どもたちと参加したあと、家に専門書が増え、子どもを連れて調査に行き、以前より積極的に学会に出かけるようになったことで、子どもたちも自然と、母の仕事は勉強であるということがわかってきたようです。自分が大学を卒業・大学院を修了していることを頑なに話さなかった私の心にもいつの間にか変化が生じ、助成2年目の夏にふとしたきっかけで、どのようなことを学んできたのか話すことができました。
◆女性研究者の環境改善
研究と子育てとの両立は不可能と、周りからのプレッシャーがありました。両親の介護も加わった現在、現実は甘くないと今でもよく感じます。子どものいない研究者に比べると、私の研究成果は少なく、研究会への参加回数も少ないのが事実であり、それを否定するだけの力量は私にはありませんでした。しかし、研究者としての停滞期はあっても、子育てに集中した時期が終わった後、研究の場に戻れる環境があればより周囲の理解を得やすいのではと感じました。本プロジェクトの存在があり、復帰できる女性研究者が増えることで、少しずつ社会の目も変わっていくのではないかと期待しています。
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