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エッセイ・コンクール

第2回エッセイ 過去の受賞作品を紹介いたします

内閣府特命担当大臣(少子化対策)賞・最優秀賞

父親の権利 清水徳子【岐阜県】

 我が家には、三歳、二歳、二ヶ月の三人の娘がいる。育児が楽しいとか、大変とか落ち着いて語る余裕はまだない。
 初めて妊娠した時、私はいろんな意味でパニックに陥った。夫は学生時代の先輩、お互い就職してマンションを借り、『ダブルインカムノーキッズ』のきままな生活を送っていた時だった。
 学生時代、就職してから、結婚してからさえ男女の違いを深く感じる事なく生活していた。家事、炊事、どちらがしても違和感はなかったし、仕事で帰りが遅くなれば外食もした。余暇はテニススクールや、ジムに通ったり、毎年ちょっとした旅行もしていた。
 妊娠、出産を機に生活はガラリと変わった。今までのようにできないことは、山ほどあった。なれない育児生活でストレスもたまった。
 妊娠、出産は女の人にしかできないのだと初めて男女の違いを深く感じた。と、同時に一人でいろんなものを背負い込んでいるように思えてイライラした。「しょせん男の人に出産はできないのよね。大変な思いをして産んだのは私! おっぱいをあげるのも私!」何度も夫に八つ当たりした。育児休暇を取得して家にこもり、働く女の人をうらやましく思ったりもした。「男の人はいいよね! 女はいつも色んな選択を迫られる。」
 夫はいつも黙って聞き流していた。そしてある日こう言った。「父親にも育児をする権利がある」責任だけじゃないのか、権利なのか…半信半疑ながら心に残る言葉だった。言葉通り、夫は仕事から帰ると、風呂に入れ、夜泣きにつきあった。
 当初、私は娘が一歳になったら復職するつもりでいた。まだ歩けない娘を連れて保育所の見学に行き、泣いてしがみつく娘の様子に復職する決意がガラガラと音をたてて崩れていくようだった。悩んでいるうちに、二人目の子を授かり、復職を延期して現在まで奮闘育児生活が続いている。
 三人目の出産に伴い、夫は育児休暇を取得した。会社では男性初の休暇取得者になったようで、上司も賛成の人や困惑する人がいたようだ。が、後押ししてくれるような人もいて取得することができた。
 悩んだ末に思い切って取得した八週間の育児休暇、家族で過ごした時間はかけがえのない時間だった。言葉通り家事に育児に明け暮れて、休暇なのに休日なんてない。どこに出かけるわけでもない。でも、家族で揃って食事ができる。育児の悩み、子供の成長を語り合える夫がいつもそばにいる。それが本当に心強かった。勇気をもらった。
 女性の働く権利が叫ばれるのと同様に、男性が育児する権利ももっと認められていいんじゃないかと思う。三人目の子が一歳を過ぎたら、五年ぶりに復職しようと考えている。

【受賞の言葉】
 受賞の知らせに本当にびっくりしています。自分の体験をとおして感じたことをそのまま表現しました。少しでも共感していただける部分があればうれしく思います。まだまだ迷うことの多い生活ですが、周囲の方々のサポートに感謝しながら、少しずつ進んでいきたいと思います。


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