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女性研究者への支援

第2回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

中野有希子【筑波大学大学院 人文社会科学研究科】

ナチス期における強制収容所の音楽活動と ユダヤ人作曲家ヴィクトール・ウルマン―ナショナリズムと自我の問題

 ナチス・ドイツの一部の強制収容所では、ユダヤ人による芸術活動が行われた。それはやがて当局によって許可され、プロパガンダ政策の一端を担うこととなり、ユダヤ人虐殺の実態を隠すための「ユダヤ人保護政策」としての宣伝に利用された。芸術家たちの「ユダヤ人としての自我」が極限状況でいかに変遷したのか、また、その活動を当局側が宣伝するに際し、いかなる情報操作が行われたのかを明らかにしたい。民族迫害とそれにかかわる国家や集団が依然として存在する現代世界を読み解くヒントになればと思う。

【受賞の言葉】
 このたびは貴プロジェクトの助成対象者にお選びいただき、ありがとうございました。子育てと研究の両立の難しさを感じる毎日ですが、今回の受賞を励みに日々努めていきたいと思います。審査員の先生方と企画ご担当の方々、推薦してくださった先生方、そして、いつも応援してくれている家族に感謝しています

受賞後の様子

「身内のサポートで子育てと研究を両立しています」
 もうすぐ2歳になる息子は会話も徐々に成立するようになり、とても楽しい日々を送っています。ただ、自我が出てきたせいか、こちらの言うことを聞かず手を焼くこともしばしばです。
 毎日託児所に通い、と書きたいところですが、通っては熱を出しの繰り返しで、自宅での看病に時間がとられることも多い1年でした。ともに遠方に住む母に来てもらったり義母に息子を預かってもらうなどのサポートで、研究と仕事をなんとか続けています。看病の末にこちらも身体をこわして休講にせざるを得ないときもありました。
 受賞後、「大学における女性研究者の支援」をテーマに研究されている方からお声をかけていただき、名前は伏せながらも、その研究発表の参考にしていただきました。また、12月の締め切りに向けて紀要論文を作成しています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 子供を託児所に預けることができたので、助成していただく以前よりも日中の研究時間を長く確保できました。最初の一年の間に、子育てしながら論文を二つ書くことができたのはそのおかげです。また、ドイツでの口頭発表のほか、コラムや書評の仕事を引き受けることができ、充実した研究生活でした。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 同じ学会に属する子育て中の女性研究者の方が、本プロジェクトのホームページで私の名前を見つけ、連絡を下さったこともありました。本プロジェクトに興味を持たれたそうで、ご本人にお会いする機会にも恵まれました。こうしたかたちで同じように子育てと研究を両立されている方からご連絡をいただき、つながりを持つことができたのは本当にうれしいことでした。
◆女性研究者の環境改善
 日常生活に直結するような利益をもたらす理系の研究助成に比べ、文系の研究成果は誰もが実感できるという部分が少ないため、文系研究者に対する企業からの支援はあまり耳にすることがありません。しかし、過去や歴史を研究し、現在と未来に還元できるかたちで問題提起し、より良い環境を模索することは、どんなに便利になった社会であっても必要です。日本ではまだまだ、女性が主となって子育てに関わる、関わらざるを得ない状況ですが、研究面と生活面の両方を支える活動がますます活発になることを願うばかりです。


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