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女性研究者への支援

第3回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

齊藤 愛【筑波大学大学院】

日本の近代国家形成期における外国人と日本人の関係―表象の観点から

 この研究が対象とするのは、日本の幕末から明治初期までの、外国人と日本人の関係を扱う文化表象である。明治維新を境に、日本はヨーロッパを起源とする近代的な人種観を受け入れ、今日に至る外国人像の基礎が作られた。1850 〜 90 年代の文学作品を中心に、絵画・文献資料に表象された外国人の身体と存在をめぐる日本人のまなざしを、同時期のオリエンタリズムなどに代表される外国人側からの記録も参照しつつ分析する。異文化が交錯する中で自己像と他者像が双方を補いながら形成されていく過程を考察し、その問題点を探る。

【受賞の言葉】
刀折れ矢尽き、研究自体を諦めようとしているときでした。思いがけないお電話をいただいたのは…。これほど強い励ましはありません。なにか大きな力が私の人生に介入し、「やりとげなさい」と背中を押されたような気がしています。それはおそらく、自分のキャリアのためだけではなく、世界をよりよくするために。大不況下、このような助成活動をあえて続けてくださっているプロジェクト関係者の皆様に心より感謝申し上げます。いつも支えてくれる友人たち、先生方、夫と両親、そして私の子どもたちに心から愛と感謝を伝えたいです。

受賞後の様子

 本プロジェクトの助成をいただき、さらに地元紙に、写真入りで受賞の様子を載せていただいたことで、家族や周囲の目が、「もういいかげんあきらめなさい」というものから、「こうなったら最後までがんばれ」というものに変わりました。研究職につきたいという希望はもっていますが、難しい状況で、博士論文を出版すれば少しは状況が変わるかもしれないと、一縷の望みを抱いています。
 一番下の子がだいぶ落ち着いて保育園に通ってくれるようになり、大変助かっています。これも、母親である私の精神状態が、助成決定により昨年度までの先の見えない状態からようやく抜け、安定していることが大きいと思います。
 上の子どもたちも、華やかな授賞式に出席させていただいたことで、母親が何かいいこと?をやっているらしいというのがわかり、コンピューターにいつも向かっている自分たちの母親は、「お仕事」しているのだというイメージを抱いているようです。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 助成の経済的なサポートで研究が負担感なくできるようになり、大学への所属(科目等履修生)が続けられました。そして、なにより大きかったのが精神的支えです。自分の研究が第三者から支援されるに足る価値があり、続けてもいいのだという証明となりました。これは対世間というよりも、子育てと研究というたくさんの時間を必要とする2つの活動を、子供を持つ女性研究者である自分の中で、是として納得させるためには大きな助けとなりました。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 助成決定時には小さかった3人の子供たちも成長し、来年には保育園児が我が家から姿を消して、少しずつ研究のための時間が取りやすくなっている実感はあります。授賞式を上の子たちはよく覚えていて、長女は自分も知的な専門職につきたいと言い始めました。時には、子供たちを調査旅行に伴うこともできたため、私の調査のみならず、子供たちの精神的成長にも大変な刺激になりました。
◆女性研究者の環境改善
 10年以上前に私が最初の出産をした当時に比べると、女性研究者が子供を持つことに関して制度が整備されてきましたが、いったん制度から外れると何のサポートも受けられなくなります。「仕事か子供か」という選択が学界という古い体質の世界ではまだまだ残っていることを実感しています。人文社会系の女性研究者対象の本助成は本当に貴重で、研究者で子供を持つという経験者はまだまだ数が少なく「お母さんで、研究者」が当たり前になるよう、社会の意識が変わってほしいと思っています。


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