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女性研究者への支援

第4回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

稲山 円【東京外国語大学大学院 地域文化研究科 博士後期課程】

現代イランにおける宗教と女性―テヘランにおける宗教儀礼の現地調査から―

 近年、イスラーム社会に対する関心は高まりつつあるが、そこに暮らす人々の日常生活や宗教儀礼については、十分に知られているとは言い難い。特にイランでは、男女隔離が厳しく行われており、男女は別々にさまざまな宗教儀礼を行っているにもかかわらず、これまでの研究は男性中心で、男女間の相違や女性独自の宗教儀礼はほとんど研究されていない。本研究では、現地調査によって女性の宗教儀礼の実態をまず明らかにする。そして、親族関係以外の社会関係を伴う宗教儀礼において、女性はどのような役割を果たしているのか、また、女性にとって宗教儀礼はどのような意義があるのかを明らかにすることを目的とする。

【受賞の言葉】
 このたびは助成対象者に選んでいただきありがとうございました。研究と育児の両立を最大限サポートしてくれる両親と夫、ご指導していただいている大学の先生方、現地調査の際に協力してくれるイランの人々、子どもたちがお世話になっている保育園の先生方、そして受賞の知らせを聞いた現地調査の地で、常に私を助けてくれる心強い研究協力者・子どもたちに心から感謝しています。

受賞後の様子

 受賞をきっかけにして、休学していた大学に復学することができました。それまでは研究を辞めるべきか迷いながらの生活でしたが、今回の受賞により迷いが吹っ切れ、研究に集中できるようになりました。復学後には早速、イランの首都テヘランで約一ヶ月半にも及ぶ現地調査を行いました。ちょうどイスラーム暦のラマダン月(断食月)と重なったこともあり、ラマダン月特有の様々な儀礼に参加・観察できたことが大きな収穫となりました。また現地には二人の子どもたちも連れて行ったのですが、短期間でありながら、ペルシャ語の簡単な会話を覚えてしまった子どもたちの適応能力の高さには本当に感心するばかりでした。現在は、その調査データを整理・分析し、学術誌に論文として投稿する準備を進めています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 他の研究助成金の多くは大学の授業料に充てることはできませんが、本助成ではそれが認められているため、大学院へ復学することができました。研究への復帰・継続が可能となったことに大変感謝しています。専門とする文化人類学は、現地調査を重視していますが、出産後は小さな子どもを日本においていくことも、現地に連れていくことも経済面から困難であり、現地調査が行えないことが大きな悩みでした。しかし、本助成によって子どもを連れて現地調査を行うことができるようになったことは、研究を進める大きな後押しとなっています。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 長男は小学校に入学し、ますます好奇心旺盛になり、研究内容についても質問してくるようになりました。まだ内容的には難しいですが、何か疑問に思った点や興味を持ったことは、自分で考えたり、人に聞いたり、本で調べたりとさまざまな解決方法があるということを知ってほしくて、積極的に研究の話をするようにしています。また、次男は保育園に入園し、毎日元気いっぱいに通っています。今後も家族への感謝を忘れず、家族を大切にしながら研究を進めていこうと思っています。
◆女性研究者の環境改善
 本プロジェクトのように、子育てと研究の両立を支援する取組みはまだまだ足りないと思います。官民問わずさまざまな方面から女性研究者を支援する制度が広がり、出産や育児を理由に研究から離れなくてはならない状況が改善されることを願っています。そして、そのような恩恵に預かった女性研究者が研究成果を社会に還元することによって、女性研究者の社会への貢献が認知され、よい循環が生まれることを期待しています。


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