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女性研究者への支援

第4回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

村角 紀子

明治期における日本美術史学の形成と展開—個人研究者と美術専門出版社の活動を軸に—

 本研究は、明治期に日本美術の情報がどのように蓄積され、通史として整備されていったかを検証するものである。これまでに、明治初期〜30年代後半について各年代毎の具体的な考察と論文発表を行ってきた。このため今後は特に、個人による研究活動の過程が記された一次史料として重要な藤岡作太郎(1870-1910)の未公刊日記翻刻を完成させ出版を目指すとともに、明治40年代〜大正への移行期における美術専門出版社の活動実態に関する調査を行い、明治期の全体像を提示したい。

【受賞の言葉】
 このたびは助成対象に選んでいただき誠に光栄です。美術館退職後、無所属で日本美術史学史というマイナーな分野を専攻する私の申請を採択していただけたことに、深く感謝しております。応募書類を作成する過程で、研究内容について、夫や恩師、旧所属長と話し合う貴重な時間を持つこともできました。受賞をこれ以上ない大きな励みに、研究に育児にいっそう努力したいと思います。

受賞後の様子

 4月から保育園の一時保育を利用するようになり、5月からは親子活動サークルに週1回参加するようになりました。各先生方には、申し込みの段階で「未来を築く子育てプロジェクト」の事業報告を見ていただくことで、私の育児・研究環境についてよく理解していただくことができました。保育園に馴染むまで大変だった子どもも、今では保育士の方も驚くほどのびのびと過ごしており、成長の早さを感じています。私も、交友関係が広がったことで、受賞前までに感じていた焦燥感や育児ストレスが激減しました。また、まとまった研究時間を確保できたことで、論文作成にも集中して取り組むことができました。受賞を機に、私の研究内容などについて親戚や知人に広く知ってもらうことができ、思わぬ人から応援の言葉をいただいたりもしています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 無所属の個人研究者という環境は変わっていませんが、本プロジェクトの受賞から第二子出産を挟んだ3年の経験を通じ、この立場に肯定感と覚悟を持てるようになりました。応募当初の私の第一目標は、それまで約10年にわたり続けてきた藤岡作太郎日記の翻刻を出版することでした。同時に、所属のないことに引け目を感じており、出版実現のためには学位を取得して研究機関に籍をおかなければ、という焦燥感を抱えていました。しかし、受賞後の子育てを通してNPO活動や社会運動に柔軟にとりくむ同年代の女性たちと接し、本当にやりたい仕事をするには肩書きに拘る必要はない、と考えるようになりました。助成期間中、論文2本が学会誌に採択され、最後の年には第一希望の出版社に日記刊行を快諾していただき、研究者としてこれ以上ない喜びと自信を得ました。今後も試行錯誤しつつ、研究を手放さず続けていきたいと思います。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 現在では、4歳になった息子と1歳の娘がいます。一時保育の利用や待機児童の期間を経て、2人とも無事に認可保育園に入所できました。病気や園行事に振り回されつつではありますが、何とか平日の研究時間が確保できる環境となり、私が泊まりがけの調査旅行に行っても、子どもたちは夫と留守番ができるようになりました。
◆女性研究者の環境改善
 公的機関で実施されている研究者支援制度において、平成26年度より特別研究員の申請資格から年齢条項が廃止されたことは、子育てをしながら研究を続けている女性にとって大きな朗報でした。今後はさらに、同研究員の期間を終了した女性が経済的に安定したポストに就職できる機会が増えるよう、各大学・研究機関が採用条件から年齢条項をなくすことが必要ではないかと考えています。