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女性研究者への支援

第5回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

呉 禧受【名古屋大学大学院国際言語文化研究科】

バイリンガル教育の要因―バイリンガル児童とその親のビリーフと母語保持努力を中心に―

 急増する外国人児童を日本社会の一員として認め、彼らを言語的に支援することは大変重要なことである。本研究では、外国人児童とその親を対象に調査を行い、バイリンガル教育に対する考え方と不安要因を明らかにする。本研究が対象にするのは、海外で生まれて後に日本にやって来た子どもたちではなく、幼児期に来日、もしくは日本で生まれたため日本語には不自由ないと思われている子どもたちである。日本において当分野の研究は始まったばかりであり、バイリンガル児童の母語能力を獲得・維持させるための要因を明らかにすることで、日本における今後のバイリンガル教育の在り方と具体的な方案の構築を目指す。

【受賞の言葉】
 この度は、助成対象に選んでいただきありがとうございました。研究のきっかけを与えてくれた長男は、私以上に喜んでくれています。また、休日には自由に研究ができるように全面的にサポートしてくれた夫と、いつも励ましてくださった先生方に感謝の意を伝えたいです。今回の受賞を、「バイリンガル教育」というテーマに対する期待と受け止めた上で、さらに研究を進め、社会に貢献できる研究成果を出したいと思っています。

受賞後の様子

 受賞後は、子育て中の後輩たちに子育てと研究の両立についてよく助言を求められるようになり、大学院の先生方にもとても喜んでいただきました。何よりもこれまでは子育て中の女性研究者、それも経済的に恵まれない社会人文科学専攻の研究者という孤独な立場でしたが、現在の自分に自信を持てるようになりました。
 研究では、助成金により経済的な負担がかなり軽減し、イギリスでの学会発表や長期セミナーへの参加、韓国での韓国日本語教育学会で研究発表を行うなど、積極的に取り組むことができました。子どもたちを韓国の実家に預けたり、学会に参加するためベビーシッターを頼んだりもできました。
 今後も、私のように子育てしながら研究者を目指している後輩たちのいい見本となれるように頑張りたいと思います。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 現在取り組んでいるバイリンガル教育の研究は世界的な研究テーマであり、日本国内より欧米で盛んに行われています。世界でどのような研究が行われているか体験したいという希望を持ちつつ、経済的な理由から研究環境は日本に限られていました。2012年からいただいた助成金が後押しとなり、2013年には研究環境をアメリカのニューヨークに移すことができました。ニューヨークの高い物価と家賃、教育費にも関わらず、2人の子どもとの生活、研究を続けられたのは助成金があったからです。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 助成をいただいた初年度である2012年は、息子が8歳、娘は2歳でした。特に息子は体調が万全ではなかったため、研究に集中することが難しい状況でした。今では子どもも成長し、息子の体調も回復したため、研究に集中することができるようになりました。息子は私に「勉強しすぎじゃないの?」と心配しながらも、母親がずっと研究を続けていることを誇りに思ってくれています。
◆女性研究者の環境改善
 一番難しいと感じていることは研究と育児の両立です。私の場合、息子の学童保育と娘の預かり保育を利用するために、生活費から費用を出していましたが、すぐに経済的な成果をもたらすことのない自分の研究にこれだけのお金をかけていいのか、とずっと悩んできました。しかし、助成を受けてからは、経済的なことはあまり心配せず自分の時間を確保することができました。
 アメリカで「未来を強くする子育てプロジェクト」の助成を受けていることを紹介したところ、お母さん研究者(mother researcher)の負担を軽減しサポートする素晴らしい取り組みだとセミナーの仲間が言っていました。また、知り合いの韓国の女性研究者たちも子育て中の女性研究者をサポートする本助成に驚き、うらやましがっていました。 本助成のように、不安定な環境の中で研究を続けている女性研究者のための支援が社会的にもっと増え、多くの女性研究者の負担が軽減できることを願います。そうなるために、助成を受けている自分たちが研究実績を残し、助成のあり方に意義を見出したいと思います。


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