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女性研究者への支援

第5回女性研究者への支援 過去の受賞者を紹介いたします

小沼 和子【一橋大学大学院言語社会研究科 博士後期課程】

ドイツ中近世印刷本における挿絵及び木版画の役割―民衆本『ティル・オレインシュピーゲル』を中心に―

 15世紀にドイツで発明された印刷術は情報伝播に大きな変化をもたらした。この印刷術によって民衆の間に広く流通した情報媒体が「民衆本」であり、なかでもドイツ民衆本は翻訳され、近隣諸国に広く流布された。従来の民衆本研究ではテキスト内容の解釈が中心で、文書中の図版との関連付けが希薄であった。しかし識字率が低かった当時においては、挿絵や木版画といった視覚的要素が大きな役割を果たしたものと考えられる。そうした時代背景に鑑み、ドイツ民衆本に用いられた挿絵や木版画に着目し、それらが情報の伝播にどのように作用したのかを解明することが、本研究の目的である。

【受賞の言葉】
 助成対象に選んでいただきありがとうございます。私は夫とともに留学したドイツで二人の子どもに恵まれました。帰国後は大学において、日本とドイツでの育児経験者として、小さな子どもを持つ研究者の研究環境の改善に尽力してきました。今回の助成は、私が研究を進めていく上で非常に大きな推進力となります。今後も日本とドイツ、両国での経験を生かし、研究に取り組んでいきたいと思います。

受賞後の様子

 受賞後の最大の変化は経済的な問題から開放され、研究に対する精神的な安定が得られたことです。助成金をいただいたことで、ドイツでの一ヶ月間の滞在調査を実施でき、停滞していた研究が大いに進んだという感触を得ています。現在は、持ち帰った資料の分析をしながら論文の執筆を進めています。2012年度に再度ドイツでの調査を行い、その成果をもとに年度内に学位論文執筆計画書(プロポーザル)を提出し、2013年度には学位申請論文を提出する予定です。
 子どもは二人とも小学生となり、下の子どもは放課後、校内に設置されている学童保育所に通っています。そのおかげで研究時間を長く取れるようになりました。今後も研究と子育てのバランスをうまく取りながら、研究を続行していきたいと思っています。

助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化
 2年前の私の研究は展望が見出せず、どの方向へ向かってよいのか判断できない状況でしたが、助成を受けたことにより得られたものは、私の人生において、非常に重要な位置を占めることになりました。
 このプロジェクトにより、1年目には現地での調査を夏と冬の計2回行うことができました。また、この成果をもとにして、2年目の夏と秋に2度、国内学会発表を行うことができました。このような状況に現在いられるということは、この助成なくして考えらなかったことです。この助成で救っていただいた私の研究に、今後は自分自身で肥料を与え、大きく育てていきたいと思っております。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
 この助成を受け始めた2年前に小学1年生と小学5年生だった子どもたちは、成長し、この春から上の子どもは中学へ通うようになりました。また、私も2年間の助成期間を卒業し、次のステップへ進みました。
 助成で支えていただいた2年間は経済的な問題から解放されたため研究のみならず子育てにも精神的に余裕を持って対応できたのではないかと感じています。この2年間で土台はしっかりと据えられたと思いますので、今後は研究においても私生活においても私自身の力で活路を見出して行きたいと思っております。
◆女性研究者の環境改善
 私の所属大学において、この春から3年計画で女性研究者研究活動支援事業が稼働し始め、それに伴って支援室が設置されています。近年においては女性研究者を取り巻く環境も少しずつではありますが、改善されてきているのではないかと感じています。それにさらに加速度を与えるために、個々人で声を上げていくことが非常に重要なのではないかと思います。研究機関において、そのような機会がある場合には、働きかけをすべきだと思います。行動しなければ何も変わりませんが、行動することによってさまざまな可能性を得られると私は確信しています。


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