● デザインを通じて、子どもたちの「自立心」を育みたい
大阪府には24の児童養護施設がありますが、施設内で十分な生活力を身につけることができないままに社会へと出た子どもたちは、その後、一般家庭に比べ、就労条件が不利になりがちで、貧困のスパイラルに陥ってしまうことも少なくありません。
そうした状況を改善するために、デザインを学ぶことによって子どもたちに、自らの将来を企画・設計できる力、つまり真の意味での自立心を育んでもらう場として「子どもデザイン教室」を開きました。児童養護施設の子どもたちのために受講料無料で開放しているこの教室では、単なる作画のテクニックだけでなく、実際のイラストやゆるキャラづくりなどを通じて、デザインの根底にある考え方やノウハウも含めて教えています。
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● 「デザイン教育」が秘める大きな力と可能性
「アート教室ではなく、あくまでもデザイン教室である」というのが、私たちの活動の基本的なスタンスです。アートは自己表現の手段であるため何を描くのも何をつくるのも本人の自由ですが、デザインはそうではありません。デザインは人に伝える手段であり、そこには相手が存在します。そのため、相手に対して何をどのように伝えていくかを常に意識する必要があります。
つまりデザインを通じて子どもたちは、相手の立場に立って考える姿勢や、効果的に伝えるために必要な物事の組み立て方など、社会生活を送る上で求められるコミュニケーション力を広く学んで身につけることができるのです。これこそが、デザイン教育が持つ特に優れた点だと思っています。
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● 成長していく子どもたちの姿が一番の成果
デザイン教育を通じて、教室に通う子どもたちの学資支援を行っている点も、私たちの活動の特徴の一つです。具体的には、子どもたちが考案・作成したオリジナルのキャラクターやデザインを企業に販売し活用してもらう取り組みを行っており、この取り組みを始めて以降、子どもたちのデザインを採用してくれる企業の数は徐々に増え、地元の有名企業からも協力を得られるようになりました。
その他にもコンテストで入賞を果たすなど、子どもたちのデザインは高い評価を得ていますが、何よりも私たちの活動の一番の成果は、周囲から認められることによって自信と元気を取り戻し、生き生きと輝く子どもたち自身の姿だと思っています。
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