● 視覚障がい者も楽しむことのできる「てんやく絵本」を製作
絵本は子どもの心を豊かに育む大切な子育てツールのひとつです。しかし通常の絵本では、視覚障がいを持つ親とその子どもが一緒に楽しむことは難しく、また、今でこそ点字つきの絵本も徐々に出版されつつありますが、かつてはほとんど見られないものでした。そこで私たちは、視覚障がいの有無を問わず誰もが絵本を楽しめる環境を整えるために、市販の絵本に塩化ビニール製のシートを貼りつけて文字と絵に点訳をほどこす「てんやく絵本」の製作・貸出を中心とした活動を、30年以上にわたって続けてきました。
多くのボランティアの協力を得て、年間350冊ペースで製作してきた「てんやく絵本」の蔵書は今では10,000冊を超え、絵本を必要とする全国のご家族、そして学校や図書館などに郵送による貸出サービスを行っています(当時の郵政省への3年にわたる働きかけにより、1987年より「てんやく絵本」の無料郵送が実現しました)。
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● 貸出希望者に合った絵本を選ぶのも大事な仕事
視覚障がい者には絵本の情報が届きにくく、貸出に際しては、自ら手にとって選ぶことのできない利用希望者に代わって、好みや過去の貸出履歴、そして子どもの性別や年齢を踏まえてぴったりの絵本を選んであげる「選書」もまた、私たちの重要な仕事になります。
絵本は手づくりの布袋に入れて送っていますが、返却時には、借りたご家族からお礼の手紙が添えられていることもあり、大変うれしく思うとともに、この活動の意義を強く実感する瞬間でもあります。
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● 点字つき絵本の認知度と理解をもっと高めたい
「てんやく絵本」の数をどれだけ多くそろえようとも、その貸出だけでは、視覚障がい者にとっては決して十分な環境とはいえません。そのため私たちは、大手の絵本出版社の協力を得て「点字つき絵本の出版と普及を考える会」を立ち上げ、その活動の結果、点字つき絵本の出版が増えるなどの成果もあげてきました。今後も絵本展への出展やワークショップの開催を通じて点字つき絵本の認知度をさらに高め、誰もが絵本とともに子育てを楽しむことのできる環境を広く整えていきたいと考えています。
注釈
●てんやく絵本:市販の絵本にシートを貼り付け、点字や絵の凹凸を表現するもの
●点字つき絵本:出版の段階で点字や絵の凹凸が施されているもの
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