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女性研究者への支援

第6回

スミセイ女性研究者支援 受賞者

コンペル 綾乃 お茶の水女子大学 リーダーシップ養成教育研究センター
研究テーマ 在外ドイツ人の歴史的経験 第二次世界大戦と在外ドイツ人

ドイツ国外に暮らしていたドイツ人は、どのような出自、伝統文化、言語を共有し、どのような社会を築いていたのか、その社会においてナチズムはどのような反応と問題を引き起こしたのか、本研究はこうした問題をテーマ化している。日常生活史的な観点から「人々はその時代をどのように感じ、生きたのか」という具体的かつ等身大のイメージを描くことを目的とする。研究成果は、単著としての刊行を目指す。

受賞の言葉
このたびの受賞は、私のささやかな研究キャリアにおいて大変光栄なことです。主催者の方々に感謝申し上げます。人文・社会科学系の学問分野では、すぐに研究成果があらわれるものではないため、周囲の理解を得られず、苦しんでいる研究者も多くいます。しかし、このような研究が芽のまま摘み取られていくことは、本人にとってのみならず、この社会にとっても不幸なことです。このプロジェクトを通じ、研究の意義、興味関心を喚起できればと思います。
受賞後の様子
 受賞が励みとなり、育児と研究に軸足を置いたワーク・ライフ・バランスを考えられるようになりました。しかし、保育園の利用申請をした際、賃金に換算できない研究は保育要件に該当しないという理由で受け付けてもらえなかったことには強い疑問を感じており、女性研究者の実情や研究の社会的意義を周知していく必要性を感じています。子育ての状況としては、2013年4月から研究者仲間でもある夫が長崎の大学に就職したため、私と2歳の娘は東京に残り、夫が単身赴任する形となりました。娘は近隣の保育所に預かっていただくことができましたが、私たちのように研究者同士で結婚した場合、単身赴任というケースも多く、実質的な育児の負担は一方にかかることになります。また、我が家の場合、父子の対話はもっぱらパソコンの画面を通してとなり、父親の母国語であるチェコ語を覚える機会が少なくなったことは残念です。
助成期間を終えて

◆研究成果・研究環境の変化

 子育て中の研究者の生活は、研究と育児という両輪で動いています。以前は、前輪を回す時は、後輪を止めるという具合に、研究と育児の時間を分けていました。研究者としてのキャリア形成と育児とが、異なる方向に向かっているような気がしてならなかったからです。本助成によって、研究と育児が、初めて二輪駆動で前に進めたような気がします。海外調査、宿泊を伴うセミナーや学会に子どもを連れて参加し、学術交流の場にも積極的に加わるようになりました。研究と育児の時間を切り替えるよりも、ともに行う環境を作ることができました。

◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード

 夫は旧チェコスロヴァキアの出身で、母語はチェコ語とスロヴァキア語です。娘にも、ぜひ母語を話せるようになって欲しいという夫の希望から、母親とは日本語、父親とはスロヴァキア語というルールを決めたのですが、娘はスロヴァキア語を話そうとはしませんでした。夫も、嫌がる娘と会話を続けることが億劫になり、日本語に戻ってしまうことがよくありました。本助成によって、子連れで海外調査に行くことができました。娘は、スロヴァキアに住む祖父母の元で過ごしました。祖父母に預けて二週間もしないうちに、スロヴァキア語を話しはじめ、幼児の言語の獲得の早さに驚きました。今では、父子の会話がスロヴァキア語で成立するようになり、彼女なりに両親の母語を認識し、使い分けているようです。

◆女性研究者の環境改善

 大学では、学内保育園施設の設置、育児休暇の取得など、子育て世代の研究者を助成、支援する制度が年々拡充しており、ハラスメントへの問題意識も高まっています。しかし、環境、待遇改善を求めているのは、大学等の研究機関に所属している研究者です。実際は、声を上げることすらできない「特定の研究機関に所属していない」研究者も多くいます。 特定の所属がないことで、図書館や保育園の利用、外部資金の応募、研究プロジェクト等への参加が阻まれることがあります。学問の裾野を広げていくためにも、特定の研究機関に所属していない研究者の研究環境の確保と維持するための施策が必要だと思います。

主催:住友生命保険相互会社 お問合せ先:「未来を強くする子育てプロジェクト」事務局 TEL:03(3265)2283(平日10:00〜17:30)