◆研究成果・研究環境の変化
本助成により、研究環境が格段に向上しました。育児との両立もさることながら、それまでは生活を支えるため、研究に充てる費用を捻出するために働かなければならない、しかし仕事に時間を割く限りは研究ができないというディレンマに陥っていましたが、そうした経済的な不安がなくなったことで精神的な安定も得られるようになりました。仕事量をできるだけ押さえながら、学会や研究会へ参加する時間を得られたこと、そして文献と向き合い考える時間を得られたことは、この研究分野では他に代えがたい貴重な支援であったと感謝しています。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
子どもの通う保育園の担任の先生からは、資料調査や論文執筆でお迎え時間が遅くなりがちなときでも「園は大丈夫ですから、お母さんはお仕事の方をがんばってください」という言葉をかけていただき、研究活動を仕事として励ましていただいていることを実感しました。本当にありがたいことです。身近に自分の仕事を理解してくれる人がいるということは、研究と子育ての両立を目指そうとする者にとっては大変に力づけられるものです。
先日、4歳になる息子が、お気に入りの絵本を手本にひらがなを書いて練習していました。きりのよいところまでくると、「今日のけんきゅうは、終わり!」とパタンと絵本を閉じたので、びっくりして親同士顔を見合わせました。特に自分の仕事を子どもに見せていたつもりはなかったのですが、親の後ろ姿から何か感じとってくれたのかと思うとうれしさがこみ上げてきました。
◆女性研究者の環境改善
子育てしながら研究するという、ある一面で互いに相反する性質の作業を両立させるためには、生活基盤が整い、子どもを預けられる環境が必要です。しかし保育園入園・継続申請に際しては、研究が「就労」であるとの認識はなかなか得られにくく、特に所属機関のない研究者は行政の云うところの「保育に欠けている」状態を客観的に証明できる手だてを必要としています。
人文・社会科学系の研究は、自然科学系の研究のように目に見えてすぐに成果があらわれるものではないので、なかなか支援に結びつきにくい分野の研究ですが、本プロジェクトのように人文・社会科学系の研究者支援制度があるおかげで、出産、育児によってブランクのある研究者が再び育つ機会に恵まれることになり、研究の裾野もさらに広がっていくことになると思います。
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