◆研究成果・研究環境の変化
ひとり親として子育てと仕事の両立に悩み企業を退職、その後Uターンして非正規雇用となり、大学教員を目指すために大学院博士後期課程への復学を目指す、というまさに「背水の陣」でしたが、本助成により長らくのブランクを埋めるような研究活動を行うことができました。資料収集、調査旅行、そして研究に伴う託児費用といった金銭的な援助はもちろんのこと、最も大きかったのは助成を受けたことにより研究者として社会的にも専門分野においても認知されたということです。助成期間中に独立行政法人日本学術振興会の特別研究員に採用され、これにより母校の筑波大学の博士後期課程に復学を果たせました。2年目の助成は辞退することとなりましたが、特別研究員になったことは研究者として非常に大きなステップであり、恵まれた研究環境で学ぶことができました。そして2年目には論文掲載や学会発表など成果を上げることができました。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
助成を受け、スムーズに研究に復帰できたことにより、子どもと過ごす時間を確保しながら研究を行うという生活のサイクルが上手に構築できました。調査旅行や学会等に子どもを帯同して行き、現地で必要な時間だけ託児するという考えは、助成を受けるまでは思いもしないことで、この経験から効率よく、また子どもや実家の両親に負担をかけることなく、調査旅行や学会への出張も充実させることができました。研究者としてひとつのことを追究していく背中を見て育った息子は探究心が強く勉強も好きで、学校生活を満喫しています。親の心の余裕が子どもによい影響を与えているようで、たいへんありがたく感じています。
◆女性研究者の環境改善
最近気になっていることとして、女性の再チャレンジ、それに伴う年齢制限の撤廃があります。特に研究者は大学教員等のポストが少なく、非常勤職が長く続くこともあります。私の専門分野においては教員だけでなく美術館学芸員という進路もあるのですが、大学教員の募集には年齢の指定がないものの、学芸員の募集においては地方公務員であったり財団職員などであったりするため、明確に上限年齢が提示されており、中途採用や再チャレンジは難しいのが現状です。子どもが小さいうちは仕事をセーブして、その間研究をコツコツと続け、子どもが手を離れたらフルタイムに復職するという再チャレンジの道があれば、女性研究者の活躍の場が広がると思いますし、別の視点から見るとワークシェアリングになると考えます。
|