◆研究成果・研究環境の変化
1年目の4月に出産したため、3人の育児を優先する方針として大学院は1年間休学しました。しかし、論文を執筆するため研究活動は継続しておりました。11月には日本精神分析学会で症例発表を行い、年度の最後には、指導教員からの論文指導を受け、論文を投稿できました。
2年目に京都大学大学院に復学しました。本学教育学研究科に「スーパーヴィジョンにおける育ちと学び—精神分析および発達行動学の概念を応用して—」という論文を投稿し、原著として採択されました。さらに、「親になることの難しさと子育て支援について」(共著)という論文を投稿し、採択されました。年度最後に投稿した論文「治療者の妊娠と「胎内の赤ん坊」空想」は、「精神分析研究」の原著として採択されました。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
幼い三女は、保育園に入園してからたくさんの病気にかかりました。そのため、大学院の授業への出席と博士論文の執筆、日々の臨床活動に加え、3人分の子どもたちの行事や授業参観などをこなすのは、本当に至難の業でした。それでも三姉妹がお互い支え合い、成長する様子を目の当たりにして私もよく助けられました。長女、次女は、私の仕事に関心を持ち、「京大、頑張って」「論文できた?」「今日は病院(臨床)だよね」と声をかけてくれるようになりました。仕事柄、具体的な事例を子どもたちに話すことはできませんが、私が、患者さん方のこころの痛みや苦しみを理解し、患者さんが生きることを支えていく営みへの情熱を伝えると、子どもなりに、社会や人間関係に関心をもち、将来の職業なども考えてくれるようになったのが、うれしい進展でした。
◆女性研究者の環境改善
女性研究者における子育ての問題は、子どもの年齢および人数によって、異なるように思います。特に、子どもが0歳、1歳の頃は、子どもの発達という視点から考えると、研究への没頭は少し控えることがあるように思います。私自身、第3子の出産で1年間休学しましたが、この助成金がなければ、厳しい選択であったと思います。子育て中も論文を書き、投稿し続けることが、文系の研究者には最も重要であると思います。そのための時間的経済的な支援がもっと広がってほしいと願います。
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