◆研究成果・研究環境の変化
本プロジェクトの助成により、研究者として最も重要な研究環境を整えることができました。保育サービスを気兼ねなく利用でき、研究時間が確保できたこと、そしてこれまで参加が難しかった国内外の学会に参加し発表できたことや参考文献の学術書籍の購入ができたことは、研究環境整備の第一歩でした。また受賞をきっかけに、研究者としてのアイデンティティを証明するとともに、現在の研究を公的に発表し、周囲の理解につながったことは、更なる研究環境の整備へとつながりました。
研究の成果としては、学術雑誌に論文を発表し、学術書(第7章を執筆)の出版に至りました。さらに、本研究を土台とした博士論文を6月に提出し、博士号の授与が決定いたしました。これらの成果は、本プロジェクトの助成なくしては達成しえなかったことです。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
受賞前は、研究職と教職を掛け持ちする生活でした。子どもはまだ1歳で、保育園に預けてはみたものの、小児喘息の影響もあり風邪を引きやすく、幾度となく保育園から呼び出しを受け、そのたびに仕事を休まなくてはなりませんでした。病時保育を頼むとなると研究費捻出の上にさらに費用もかさみ、家族の理解を得ることも厳しい環境でした。しかし、受賞後は経済的な余裕により日中は研究に専念し、自分自身の精神的な余裕もできたからか子どもの発作も少なくなりました。私自身が研究を続け、充実して過ごすことで自然と笑顔になり、その笑顔が子どもの元気の源になっていく。2年間そのような毎日を過ごすことができたのは、本プロジェクトのおかげです。大変感謝しています。
◆女性研究者の環境改善
応募当時は、研究環境そのものが整っていない中で研究する厳しい状況にもかかわらず、夫の収入があるために奨学金の対象にもなれないという状況でした。ただでさえ、人文系の研究者はその研究成果の見えにくさもあり不透明な存在である上に幼子の子育ても重なり、家族を含め周囲からは全く理解してもらえませんでした。そのような中、本プロジェクトは多大なる理解を示し、救ってくれたと感謝の気持ちでいっぱいです。
「女性研究者」とひとくくりにしても状況は一人ひとり違います。率先して子育てしながら人文研究に励むことで、多様な背景を持つ研究者の存在を示し、その過程でさまざまな人とかかわっていく、その積み重ねが、社会の一人ひとりの「まなざし」を作り、異文化への理解や寛容な態度を生み、紡いでいくのだろうと思います。それゆえに、多様な価値を育む社会実現を目指し、ことばの教育実践を通して貢献していきたいと思います。
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