◆研究成果・研究環境の変化
子どもが1歳7カ月のときに夫が単身赴任したこともあり、研究より目の前の子どもを優先しなければならず、他の人に比べ出遅れているという思いや、出産前にはできていたことができなくなってしまった焦燥感がありました。そのようななかで受賞が決まり、表彰式で大日向雅美先生がおっしゃった「花の咲かない寒い日は根を下へ伸ばせ」という言葉が、とても心に響きました。自信と時間的・心理的余裕を得たことで、常勤の研究職にも応募できるようになりました。研究活動の基礎を固め、前に進んでいく力をいただいた2年間でした。
◆育児環境の変化、気づき、感想、印象的なエピソード
調査のためカンボジアに渡航するとき、泣かれるのが嫌で留守にすることを出発前まで子どもに黙っていました。出発前日の夜になって、泣かれることを覚悟しながら「明日からいないけど、お父さんと留守番しておいてね」と言うと、泣かずに「ママいなくても楽しく過ごせるよ」という言葉が返ってきて、大変驚きました。出発当日は、有給休暇を取って子どもと過ごすことにしてくれた夫と共に、笑顔で見送ってくれました。心配して現地から電話したときも、明るい声でその日あったことを話し、楽しく生活している様子が伝わってきました。驚きとともに、子どもの成長を感じました。
◆女性研究者の環境改善
研究と子育ての両方を支援する「未来を強くする子育てプロジェクト」は、新しい時代を拓く助成だと思いました。過去の実績ではなく、将来性を評価する方針も、とてもありがたかったです。子育て中の女性研究者の環境は少しずつ改善されていますが、その一方で非常勤講師の雇い止め、教育現場の長時間労働化など、不安を感じる事態が進行中です。将来的な学問の発展のために、研究・教育機関全体で研究者が安心して働くことができる条件を整える施策が必要であると感じます。
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