サステナビリティ座談会

将来世代との対話は、ウェルビーイングをひろげる大きな一歩

今回は、住友生命グループVision2030の実現に向けた戦略を推進している堀執行役員、全国の学校で金融教育等を実践し、将来世代への教育支援に携わっている山口さん、ウェルビーイングの社内外への浸透など、当社のブランド価値向上に関する取組みを行っている鈴木さんの3名で、座談会を実施しました。
サステナビリティという視点で重要なステークホルダーであり、またウェルビーイングへの貢献を進める上でも欠かせない「将来世代」について、当社のこれまでの関わりや、これからの展望に触れていきます。

<プロフィール>

執行役員兼企画部長 
堀 竜雄 (ファシリテーター)
営業総括部兼新規ビジネス企画部 
山口 潤
ブランドコミュニケーション部ブランド戦略室 
鈴木 萌

SDGsのさらに先を見据えて

執行役員兼企画部長
堀 竜雄

当社は、2030年時点のありたい姿を、「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」と掲げていますが、そもそもウェルビーイングとは何でしょうか。一般的には、身体的な健康だけでなく、社会的、精神的にも健康で幸せな状態を指すと理解されており、当社ではこれを「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」と定義しています。当社がすべてのステークホルダーのウェルビーイング実現に貢献していくには、本業である保険を通じた経済的な保障の提供や、 “住友生命「Vitality」”を通じた健康増進へのサポートという身体的な領域でのサービス提供に加えて、社会的・精神的な領域でも、ウェルビーイングにつながる価値を提供していく必要があります。これを満たすには、「つなげる」という事がキーワードになると考えています。社会とお客さまをつなげる、あるいは世代をつなげるという事に対して、当社はどういった価値を提供できるでしょうか。
鈴木さんは、当社のブランド価値を向上させ、社内外に浸透させる活動のほか、世の中にウェルビーイングという考え方や取組みをひろげる「日本版Well-being Initiative(ウェルビーイングイニシアティブ、以下WBI)」という活動に参加されていますが、WBIではどのような議論がされていますか。

鈴木 WBIは、日本経済新聞社と公益財団法人Well-being for Planet Earthの呼びかけを元に、2021年3月に設立された企業コンソーシアムです。ウェルビーイングに関する取組みを社会的に広げていこう、という意識をもった企業が賛同し、ウェルビーイングを測定する新しい指標に関する議論や、ウェルビーイング経営を進める各企業の活動推進がなされており、当社もこの取組みに参画しています。
特に、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)では、2030年が目標の達成期限になっています。WBIでは、SDGsの達成や、それより先の社会のウェルビーイング推進ということを考えた時に、FR (Future Generations Relations)とも呼ばれる、将来世代とのコミュニケーション・対話が一つ大きなトピックとして出てきています。

企業と将来世代との対話が、重要ということですよね。当社にとっても将来世代とのつながりは重要であり、さらに推進すべきテーマの1つですよね。

鈴木 将来世代との対話については、今回、WBIに参画している企業と連携し、「FR」活動という形で展開することにしました。当社ではこれまで、50年近く続けている「こども絵画コンクール」や、学生向けの教育支援、アスリート支援など、将来世代が健やかで豊かに成長できるよう、様々な取組みを進めており、今後も「バイタリティある生き方」というテーマで活動を行っていきます。

WBIの議論に参画されている方々は、鈴木さんのような若い世代の方が多いのですか?

鈴木 年齢層は幅があって、役員や部長クラスの方もいますし、新規事業を推進しているという30代くらいの方もいて、様々です。

当社ならではのウェルビーイングへの貢献とは

WBIに参画している各社は、それぞれ素晴らしい取組みをされていると思いますが、他社と対話する中で、当社だからこそできるウェルビーイングへの貢献は、どういったものだと思いますか。

ブランドコミュニケーション部
ブランド戦略室 鈴木 萌

鈴木 金融に関する知識の提供、特にファイナンシャル・ウェルビーイングへの貢献は、当社ならではの視点だと感じました。WBIの会議の中でも、「自分の所得に対してどう感じているかが、今の生活や5年後の生活のウェルビーイングに最も影響している」という調査結果が報告されています。また「同じ年収帯でも、金融教育を受けてきた人のほうが、相対的にファイナンシャル・ウェルビーイング度が高い」といったデータもあり、やはり金融教育は大事だ、という話も出ています。ファイナンシャル・ウェルビーイングへの価値提供という意味では、従来から実施している生命保険のコンサルティングとも親和性の高い領域でもありますので、当社だからこそ、さらに貢献できる余地があるように感じます。

「貯蓄から投資へ」のシフトが加速し資産形成の重要性が高まっている中、金融リテラシーについてもっと知ってもらうことは重要ですね。さて、「将来世代とのつながり」と、「金融教育」という視点が出ましたが、山口さんは、将来世代へ向けた教育に、当社の中ではいち早く注目して、「出前授業」というプロジェクトを立ち上げ、金融教育などの教育支援を実践されてきました。まず、「出前授業」というのは、どのような取組みでしょうか。

山口 「出前授業」は2021年から始めた取組みです。主に中学校、高校を対象に、金融教育だけでなくキャリア教育やコミュニケーションなどをテーマに授業を行っており、これまで全国125校(2024年9月現在)で教育支援を実施してきました。最初は私自身が講師として授業を行うところから始めましたが、現在は講師の担い手も増え、支援対象も拡大しています。

もともとは、社内のビジネスコンテストである「スミセイInnovation Challenge」への応募で実現したプロジェクトですが、応募しようと思ったきっかけを教えてください。

山口 私は、自ら子育てをしていく中で、子ども達の将来について思うところがありました。多くの人が、あまり社会の広さを知らないまま、就職する企業を選んでいるのではないか。本当は様々な夢の選択肢があるにも関わらず、非常に狭い視野で現実的に生きる道を選んでいるのではないか、と感じていたのです。
そのような中で、先ほどの「スミセイInnovation Challenge」の募集がありました。現在の子どもたちが、大人になった時に、どうしたらやりがいや納得感を持ちながら仕事をできるだろうか、ということを考え、「社会と子供たちとの接続」をテーマに、少し壮大な夢を描いて、応募してみました。

社会と将来世代を「つなげる」という出発点から、「出前授業」が現在の形になるまでに、どういったプロセスがあったのでしょうか。

山口 まずは学校の先生や、教育委員会など、様々な教育関係者のところに足を運び、実際の声を聞いていくことにしました。そこで聞いたのは、「お金」や「人生」といった先生たちが教えることが難しいようなテーマについて、民間企業ならではの視点のアドバイスがほしい、という声です。これが、教育関係者の実際のニーズでした。そこで、住友生命ができることとして、金融教育を切り口にした授業を提供することで、将来世代への教育に関わる一歩目になるのではないかと考えました。

人生100年時代と言われる中で、いわゆる介護の備えや老後の備えなど、当社も様々なサービスを提供していますが、いわゆる責任世代になってから初めてお届けするのは、実は遅いですよね。もっと若いうちから、自分の人生設計や資産形成、保障、ウェルビーイングといった要素を、人生においてどう備えておくべきかを考えておくのが理想的です。しかし、一般的な学校教育でそれらのことを教える機会は、まずないのではないでしょうか。

山口 実は、今提供している金融教育の授業は、一言でお伝えすると、お金を切り口としながら自らのウェルビーイングについて考えるものです。お金に関する話題から、ライフプランと健康寿命、そして社会とのつながりという話をしていくことで、ウェルビーイングという言葉も、「なるほど!幸せに生きることや、自分らしくに生きることが大事なんだ!」と、非常にすんなりと理解が進みます。そして、授業の最後には、「これから自分が自分らしく幸せに生きていくために、いまからの一歩として何ができるんだろう」という事を、それぞれの生徒が考えてアウトプットしてもらう、というプログラムにしています。
授業後には、理解度や満足度、自分のこれからの人生に役立ちそうか、といった項目をアンケートで聞いていますが、これまでのところ、どの世代からも「新鮮に捉えられて、凄く前向きになれる」という声をいただいています。

将来世代との対話を通じウェルビーイングな社会の実現へ

当社の保険にご加入いただくお客さまは、ご契約者としては18歳以上が多いので、将来世代へサービス・価値を提供するという意味においては、若い世代とのつながりをどう作っていくかは大きな課題だと思います。

営業総括部兼新規ビジネス企画部
山口 潤

山口 授業を受けた方には、住友生命に対する印象の変化についても聞いています。もともと60%程度は当社のことをあまり知らなかった生徒ですが、授業後には「いい会社であると思う」と答えてくれる生徒が全体の90%を越えており、そういった生徒が既に1万人を超えてきています。今後さらに多くの方に価値を提供していくためにも、こうした取組みをしているということを当社職員に知ってもらうことも含めて、もっと頑張って行きたいです。

鈴木 私が担当しているインナーブランディングの重要な取組みの一つに、全社4万人の職員をオンラインでつなげる、「ブランド・ライブ」というイベントがあります。このイベントでは、社内の取組みを紹介し、担当する職員に苦悩や本音をインタビューするほか、視聴者からの質問や感想をオンラインチャットで受け付けています。特に、約3万人いる当社の営業職員は、普段は社外で営業活動を行っているので、まだまだ知られていない社内の素晴らしい取組みも多くあります。「ブランド・ライブ」が、そうした取組みに目を向けるきっかけになればいいなと思っています。
2024年度の「ブランド・ライブ」では、山口さんの「出前授業」を取り上げました。イベントの後には、全国の支社から「山口さんのように、私も教壇に立ちたい」という声も届いており、とても大きな反響があったと感じました。

山口 学校との関係が深まると、金融教育やウェルビーイングのほかにも、様々なお悩みがあることが分かります。例えば、グループワークを学校で導入したいけれども、生徒同士のコミュニケーションがうまくいかないといったお話もおうかがいしました。そこで、講義形式の授業だけではなく、課題解決力やプレゼンテーション力を磨くことを目的とした実践形式のプログラムも、民間企業の視点から提供するようになりました。

最後に、当社がウェルビーイングに貢献する領域を、これからさらに広げていくにあたって、お2人から、これからの展望や挑戦したいことを聞かせてください。

鈴木 ウェルビーイングに貢献するサービスをお客さまや社会に提供していくにあたっては、それを推進する私たち一人ひとりの職員が、自分自身で考えて取り組んでいくことが欠かせません。2024年度の「ブランド・ライブ」では、山口さんのほか、“住友生命「Vitality」”を開発した職員の想いなども取り上げましたが、そうしたウェルビーイングに貢献しているそれぞれの職員の想いをより社内に広げるために、今年度は新たな取組みとして、スミセイ「for your well-being」アワードという企画を始めました。これは、お客さま・働く仲間・社会などのウェルビーイングに貢献している職員を、職員による推薦等を通じて選考し、表彰するものです。この表彰を通して、それぞれの職員が、ウェルビーイングに貢献する周囲の取組みに目を向けて、自分にとってウェルビーイングな行動とは何かを具体的に考えるきっかけになれば、と思っています。

山口 先ほどの「出前授業」は、中学校・高校だけでなく、小学校や大学にも授業を提供し始めており、おかげさまで、将来世代の幅広い層に対象が広がってきました。
また直近では、大阪市の公立中学校から、「年間の授業をプロデュースしてほしい」というご依頼をいただいており、それに応える形で、課題解決型の学習を実践する「仮想職業体験プロジェクト」(2024年8月29日リリース)を立ち上げました。このプロジェクトは、当社だけではなく、他の民間企業も含めた6社が参画するものとなっています。子どもたちが参画企業に半年間「(仮想)入社」し、その企業が抱えている課題を一緒に考えて、最後にその企業に対してプレゼンテーションをする、という企画です。「出前授業」がフェーズ1だとすれば、「仮想職業体験プロジェクト」は、いわば「フェーズ2」と言えるもので、こうした地域の企業と協働して学校教育に関わっていく取組みを、さらに進めていきたいと考えています。

まさに「つなげる」ということにふさわしいお話ですね。当社の企業理念の実践にもつながる、率先した取組みだと感じました。
住友生命の企業理念である「経営の要旨」には、「社会公共の福祉に貢献する」という一節があり、当社ではこれを存在意義(パーパス)と位置づけています。将来世代も含めた、すべてのステークホルダーに対して、ウェルビーイングに向けた価値を提供していくことが重要です。
また「経営の要旨」にはもう一つ、「進取不屈の精神」というキーワードがあります。これは、前例や常識に囚われない柔軟な発想で、常に新しいことに挑戦する、ということを意味しており、住友の事業精神を受け継ぐ経営理念として、従前から大事にしています。従来の発想を打ち破った商品である“住友生命「Vitality」”のように、一歩先んじて事業に挑戦していく、そして新たな価値を届けていく、ということが、「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」の実現に向けて重要だと考えます。
すべてのステークホルダーのウェルビーイングを支える取組みに、終わりはありません。当社はこれからも、進取不屈の精神を持ちながら社会公共の福祉に貢献し、各領域での取組みを続けていくことで、持続可能な未来の実現を目指していきます。