社外取締役メッセージ
社外取締役としてのご自身の役割について、どのようにお考えですか。
弁護士としての法的なチェックとともに、消費者目線での監督を重視しています。
社外取締役としての私の役割は、会社の重要な決定や業務の執行が適正に行われているかについて法的な観点からチェックをするとともに、消費者目線を重視した経営が行われているかについて助言することと認識しています。
私は弁護士となって約30年間、製造物責任が絡む製品事故の問題や悪質業者による集団的な取引被害など、さまざまな消費者問題に取り組んできました。その経験から、人々が安心して暮らせる社会を実現するために、また公正な取引市場を実現するためには、消費者と事業者が互いを知り、理解し合って“協働”することが重要で、それこそが双方に長期的な利益をもたらす唯一の道と確信しています。
住友生命においては、お客さまの視点を大切にすることはもちろんですが、すべてのステークホルダーの視点に立って、何が公正で豊かな社会なのかを考え、社会と協働しながらサステナブルな社会を目指すことが求められています。そうした企業活動を継続することで社会からの信頼を獲得することができ、ひいては企業価値の持続的な向上につながっていくものと考えます。この目標に取り組む重要性について、住友生命の職員一人ひとりが腹落ちしているか、組織全体として取り組む体制が整っているか。そうした点も注視しながら、客観的な意見を申し上げるよう心がけています。
住友生命の“消費者志向経営”に対する評価をお聞かせください。
消費者視点が職員一人ひとりに根付いています。今後も一層対話を重視すべきと思います。
「消費者志向経営を行うためには消費者と事業者が理解・協働することが重要」と申し上げましたが、私自身、それを意識したきっかけは社外取締役に就任する以前、『CS向上アドバイザー会議』の委員を約10年間務めた経験にあります。
この会議では、お客さま本位推進部や商品部など現場の方々と私たち社外アドバイザリースタッフが集まり、顧客満足向上に向けた施策について深い議論を重ねました。担当者の皆さんからは、さまざまな意見を求められることが多く、いかに真剣に消費者目線で自社のサービス向上を考えているか、正直驚いたことを覚えています。議論を重ねる中でお互いの理解が深まり、方向性が明確になったおかげで、実際の施策も消費者視点に立った内容に改善できました。まさに現場との対話の成果だと思います。
もう一つ、消費者との対話も重要です。たとえば、主力商品のVitalityはお客さま視点を非常に大切にした保険ですが、世の中にはその価値がまだまだ理解されていない面があります。Vitalityを通じて、住友生命が社会に何を提供しようとしているのか。それは、健康で長生きができ、安心して豊かな生活を送るための仕組みを提供しているわけですが、そのことを消費者にもっと理解していただければ、「良さそうだな、自分も加入してみようかな」という動きが自然に生まれます。
今後はCMなどメディアによる情報提供のみならず、消費者と直接お会いする、またSNSなどの双方向メディアを活用するなど、きめ細かな“対話コミュニケーション”が大切になります。それによって消費者からさらなるニーズや課題をいただくこともできるはずです。そうした地道な対話の取組みが、職員の皆さん一人ひとりに浸透しているかどうか。私自身も現場での意見交換を通じて確認していきたいと思います。
取締役会の実効性、運営面に対する評価はいかがでしょうか。
実効性は高いレベルです。今後はサステナビリティ観点でのチェックが重要です。
現状、住友生命の取締役会の実効性は高いレベルにあると評価します。経営戦略やガバナンスなどの案件も増えている中、重要議題について時間をかけて審議することができ、以前にも増して活発な議論が交わされるようになったと思います。
今後、さらに取締役会を進化させていくには、サステナビリティ経営の観点でモニタリングすることが重要だと思います。経営課題や投資、環境課題への関与などあらゆる業務執行について、サステナビリティ観点のチェックをより一層強めていく必要があります。と同時に、私たち自身、サステナブルな社会への新たな動きや行政、企業の多様な取組みについて、しっかりと情報収集し、学びを継続する必要があると思います。
また、私が特に注目しているのは、サステナビリティ経営方針で掲げた4つの項目※が、組織全体でしっかり実行されているかという点です。その実現のための体制づくりはどうか、組織のすみずみまで落とし込まれているか、といった点も厳しくチェックしていきたいと思います。
その中でも、欠かせない視点がステークホルダーとの協働です。なぜなら、今や企業だけでなく、行政や自治体、消費者団体もサステナビリティに取り組んでいますが、それぞれの組織と住友生命が真に連携し協働していくことで、より多様な広い領域でのサステナビリティの実現につながると考えるからです。住友生命では既にいくつか取組みを始めていますが、今後一層力を入れて取り組んでいく必要があると同時に、協働によるサステナブル社会構築にあたり、住友生命が主体となって果たすべき役割は極めて大きいと思います。
今後の住友生命に期待することは何ですか。
社会にウェルビーイングの浸透を図り、価値向上を目指してほしいと思います。
住友生命では、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」を支えるサービスをエコシステムとして展開することを“Well-being as a Service(WaaS)”と位置づけ、お客さまをはじめ、職員一人ひとり、社会のすべての生活者に向けたウェルビーイングの提供に取り組んでいます。そしてその認知・理解の促進にも注力していますが、Vitality同様、より一層注力が必要な課題と認識しています。
ウェルビーイングは素晴らしい考え方であり、私の認識では、心身ともに健康で長寿を享受できる社会、そして自分らしく豊かな人生を楽しめる社会を目指すことと捉えています。また、ウェルビーイングは住友生命だからこそ社会に提供できる価値であり、それによって豊かな未来づくりに貢献していることを、もっと多くの人にご理解いただく必要があると思っています。
もちろんウェルビーイングは住友生命だけで実現できることではありません。国や自治体、関連企業のサービスとの緊密な連携・協働が必要不可欠です。その観点からも、住友生命は多様なステークホルダーとの協働においてリーダーシップを発揮し、ウェルビーイングという価値あるエコシステムの可能性を切り開いてほしいと思います。私もその実現に向けて、精一杯助言・助力したいと思います。