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2022 社長メッセージ

01:人生100年時代。サステナブルな未来を見据えて

 「人生100年時代」というテーマは、生保業界のみならず、我が国が固有に抱える大きな課題です。とりわけ、国民の平均寿命の伸びに伴い、従来のサービスにとどまらず、人々が生きることにいかに寄り添い、支えていくことができるか。こうした点に、私たち生命保険会社の真価が問われていると感じています。

 日本は世界有数の長寿国ですが、日本では、「誰かの助けを借りずに生きていける寿命=健康寿命」と平均寿命の差が男性で約9年、女性で約12年あります。この「健康寿命」を延ばすということ、つまり、誰かの助けを借りずに自分がやりたいことができる「期間」を延ばすことは、「クオリティ・オブ・ライフ」を高めることにほかならず、今後、単に平均寿命を延ばすことだけではなく、どう健康寿命を延ばしていくかも、とても重要だといえます。

 日本には国民皆保険という手厚い社会保障制度がありますが、この制度のサステナビリティを考える上では、人々がこの仕組みを理解した上で、自助として何が必要かを理解し、行動することが必要です。この観点から、当社は「社会保障コンサルティング」を推進していますが、経済面の備えにとどまらず、心身の健康、長寿リスクの軽減など、お客さま一人ひとりの未来を支える役割がより重要になってくると感じています。

 コロナ禍はまだまだ予断を許さない状況でありますが、今後を見据えれば、2030年のSDGs※1、2050年のカーボンニュートラル※2への対応をはじめ、いかに持続可能な社会を築いていけるかといった中長期的な課題に、世の中の目線は移っていっています。その中で、息の長いビジネスモデルである生命保険事業は、より長期の視点を持ってこれらの課題に取り組むべきであり、グローバルの課題解決に向けて確かなプレゼンスを発揮していく必要性があります。

 こうした事業環境を踏まえて、2022年5月にサステナビリティ経営方針をあらたに制定しました。その発端は、従来の「CSR経営方針」で掲げていた、ステークホルダーに対する企業としての社会的責任に加えて、もっと社会に対して、またその先の未来に対して企業がどう責任をもつかということが大きく問われているという認識です。そして、「社会公共の福祉に貢献する」という当社のパーパスのもと、果たすべき「ミッション(使命)」としてサステナビリティ経営方針を位置づけ、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイングに貢献する」ことで、「豊かで明るい健康長寿社会の実現に貢献する」、「持続可能な社会の実現に貢献し、持続的に成長する」ことを目指し、お客さまや社会とともにサステナブルな未来の実現に貢献すべく取組みをスタートしています。

※1   SDGsとは2015年の国連サミットにて採択された2030年までの国際開発目標で、17の目標(ゴール)および169のターゲットが設定されています。
※2   二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ全体としてゼロにすることを意味しており、住友生命は2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを目指すことを宣言しています。

02:「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」のさらなる浸透へ

 今年、創業115周年を迎えた住友生命は、これからの社会の変化にいかに適合していくか、また、人口減少や少子高齢化などの大きな流れを捉えて、お客さま一人ひとりのニーズに合ったサービスをいかに提供していくかが求められています。その目指すものとして「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」という考え方を打ち出しています。昨今、世の中に少しずつこの言葉が認知されてきたと感じますが、「よりよく生きる」という価値観はまだ十分には理解されていません。そのために、「住友生命=ウェルビーイングの会社」というブランドを確立すべく、住友生命ならではの価値提供を通じてウェルビーイングな社会の実現を目指していこうとしています。

 まずは社内に浸透・定着させるべく、「職員自身にとってのウェルビーイングとは何か」を考えてもらう施策を1年間実行してきました。また「人生100年サポート協議会」※3を通じて、ジェロントロジー※4の考えに基づいた教育等も行いました。その結果、「何か特別なことをするわけではなく、日々の生活、経済・社会活動の場で、お客さまあるいは地域の方たちと接点を持ち、小さな貢献を積み重ねる」ということが「よりよく生きる」ことの一つのプロセスだという理解が大きく進みました。

 2022年度は、次のステップとして「対話と行動」をテーマに、「対話」により、職員同士のさらなる理解促進を図りつつ、「お客さまや社会とも積極的に対話し、行動していきましょう」と訴えています。

 ウェルビーイング実現に向けた当社の取組みは大きく二つあります。一つは、お客さまの選択肢を広げるための取組みです。昨今は、保険に対するお客さまの志向が「しっかりとしたコンサルティングと手厚いフォローを求めるもの」と「できるだけシンプルなもの」と二極化する傾向にあり、その多様化する志向に的確に対応する保険商品やサービスが、より重要になってきています。

 もう一つは、外部連携による多様なサービス提供に向けた取組みです。当社では、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」を支える多面的なサービスを提供するため、住友生命単独ではなく、様々な企業や、自治体、学術機関などと連携し、「WaaS」※5というエコシステムの確立を目指しています。

※3  >「人生100年サポート運営」参照
※4 老後の過ごし方や高齢社会の様々な課題を幅広い分野から研究する学問です。
※5  「Well-being as a Service」の略で“、住友生命「Vitality」”を中心に「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」を支えるサービスをエコシステムとして展開していきます。
>「WaaS(Well-being as a Service)の拡大」参照

「Vitality」加入拡大でお客さまのウェルビーイングの実現へ

 当社では、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」を支える中核商品として、2018年に“住友生命「Vitality」”※6を発売しましたが、おかげさまで、2021年度に累計100万件を突破しました。現在は、次なる大台突破に向け、この「Vitality」の更なるレベルアップやウェルビーイングのための価値提供に向けた検討を進めております。すでにこれまでの成果として、ご加入者へのアンケートでは、加入者の9割近くが実際に行動を起こして身体的にも精神的にも良い状態になったと実感されています。これは一つの大きな成功といえます。今後、累計500万件を目指していますが、日本の対象人口の約5%の方の健康増進活動をサポートすることになれば、社会もより変わっていくのではないかと期待しています。

 この取組みの一環として、現在推進しているのが、Vitality健康プログラム単独での提供です。当初は保険と健康プログラムをセットで提供していたものをプログラム単独でより手軽に幅広く提供できるようにしました。日々の生活の中で手軽に健康増進プログラムの体験を重ねることで、「Vitality」をより身近に感じてもらうことができます。現在、企業からは「福利厚生で使いたい」、自治体からは「地域住民に提供したい」という声が寄せられており、こうしたニーズにもしっかり対応していきます。

 さらに、提出された健康診断の情報に基づいた、健康診断結果の継続管理や相対評価が把握できる「Vitality健康レポート」※7を提供しています。「Vitality」のアプリを通じて蓄積されるデータを顧客にフィードバックすることで、さらなる健康増進や予防の喚起につなげようというのがねらいです。

 営業活動に関しては、現状、コロナ禍の影響などもあり、リアルな接点が取りづらくなる一方、顧客側もインターネットにあふれる保険関連の情報をどう判断していいのか難しくなっています。

 この課題の解決策の一つが、デジタルの活用です。保険という非日常的な商品の特性上、デジタルだけで理解いただくのは難しい面もあるので、「人とデジタルが融合」したサービス提供によってお客さまのウェルビーイングの実現に貢献していきたいと考えています。たとえば、一昨年に導入した「LINE WORKS」を使ったお客さまとのコミュニケーションが成果をあげています。お客さまからは、非接触の中で「話したいタイミングで担当者とコミュニケーションできる」と好評です。また、お客さまが「Vitality」をリアルに体験できる場として、2021年8月、東京で3店舗目となる「Vitality」プラザを銀座にオープンしました。この7月には、大阪の梅田にも新店舗を立ち上げ、デジタルとリアルを融合した顧客接点づくりを推進しています。

※6   “住友生命「Vitality」”は保険契約とVitality健康プログラム契約で構成されており、保険本来の保障に加え、お客さまの日々の健康増進活動を評価し、ステータスに応じて保険料が変動する仕組みを組み込んだ保険です。
>「Vitality・健康の価値」参照
※7   >「Vitality健康レポートの提供」参照

外部連携を強化し、ウェルビーイングの価値向上へ

 今年度以降の重要取組みとして、外部との連携で「いかに顧客や社会に価値提供していく」、「ウェルビーイングを具体化してどう展開していくか」について、「Vitality」という核を活かして、企業や自治体との連携スピードを早めるだけでなく、「健康とは何か」、「よりよい社会環境とは何か」といった研究分野にも取り組んでいます。そのためにスタートアップ企業や、様々な研究機関などとの多面的な連携を進めており、2020年11月に立ち上げたCVCファンド※8の「SUMISEI INNOVATION FUND(スミセイイノベーションファンド)」を通じて今後も事業共創を加速させ、WaaSエコシステムの確立を目指していきます。

 ニッチな分野の保障を手がける少額短期保険分野においては、2019年に「アイアル少短」を子会社化しましたが、大手社によるこの分野への参入も相次いでおり、各社とも多様なサービス提供に向けて試行錯誤しています。アイアル少短においては、2021年度はセルソース社と協業したバイオセラピー費用(運動器)をカバーする業界初の「PFC-FD保険」※9や、2022年4月には業界初となる「熱中症保険」をPayPayアプリを通じて販売しており、今後も新たなサービスや価値提供のトライアルを積極的に進めていきます。

※8   CVC(Corporate Venture Capital:コーポレートベンチャーキャピタル)とは、将来性のあるスタートアップ企業への投資を通じて事業共創を効率的・効果的に推進する仕組みです。
>「イノベーションへの挑戦」参照
※9   2022年2月に開発した、スポーツ傷害や変形性関節症等の治療に用いられるバイオセラピー「PFC-FD療法」を保障する保険で、プロサッカークラブなどのアスリート団体に導入されています。

03:人とデジタルの融合により価値創出を目指す

 住友生命には現在、約4万名の職員が在籍しており、かつては「人と紙の会社」といわれていました。今は「人とデジタルの会社」となっていますが、いずれにしても人なくしては何事も成り立ちません。

 今後、さらなる人材の多様化や人材価値の向上が必要ですが、この問題は人事部門だけで解決できるものではないということから、社長就任時に自らを本部長とする「人財共育本部」※10を立ち上げました。「人財共育」を推進する上では、お客さま・社会のウェルビーイングの実現に加え、職員のウェルビーイングの実現も重要であり、ウェルビーイングを社内にいかに浸透させるかについて、事業戦略と人財戦略の一体化を1年間かけて実行した結果、その成果が表れてきたと感じています。

 たとえば、ウェルビーイング浸透に向けた人財投資の一つとして、全職員を対象とした「ウェルビーイングに資する手当」の支給や、自己研鑽支援のための社外研修・講習の補助金支給を従来の倍額に引き上げる取組みなどによって、職員が自発的なチャレンジを始めてくれています。

 また、シニア世代、若い世代、女性など、各層別の人事施策も行っています。

 シニア層に向けては、4月から65歳に定年を延長しましたが、自分の得意な分野に注力してもらうための取組みを開始しました。たとえば、60歳の4月を「第3の入社」と位置づけ、これまでのキャリアを振り返りながら、新しいスタートをきるために一堂に会する機会を設けています。その機会に「あらためて自分のやりたいこと・やれることを合致させ、企業への貢献のみならず、自分自身の100歳への貢献につなげる」という意義を共有することで、皆さんがモラル高く職務に励まれています。若い世代に向けては、2022年度入社の総合キャリア職から、一人ひとりのキャリアイメージをより一層把握し、社会人として自身の能力やスキルを入社直後から最大限発揮できるよう、希望に沿った地域拠点へ配属する人事制度を導入しました。女性活躍に向けては、2025年度末の女性管理職比率50%という目標に対し、現在、達成ペースで推移していますが、単に管理職になるだけではなく、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できるよう、エクイティ(公平性)の概念を加えた「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」※11を浸透させるべく専任の役員を選任して推進しています。

 また、全職員が自分の業務以外のスキルとして「デジタルスキル」「グローバルスキル」「ソーシャルスキル」の3つを修得できるよう、充実した研修メニューを提供しています。

 「VUCAの時代」※12と言われるように、将来の予測が困難な時代ですが、だからこそ失敗を恐れず挑戦し、新たな価値創造に立ち向かっていく風土が重要です。2020年から「スミセイ Innovation Challenge」※13と題して、自ら新規事業のアイデアを提案してもらう社内コンペを実施しています。ここで採用された提案については、手をあげた本人自らが、その所属に異動して遂行してもらっており、これにより、新規事業のアイデアは、着実に芽を出しています。

※10 2021年4月に社長直轄の部門横断組織「人財共育本部」を立ち上げ、新しい価値を創造できる「人財」づくりに向けた中長期的な戦略の検討を開始しています。
>「人財共育への取組み」参照
※11 >「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」参照
※12 VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、将来を予測するのが困難な状況を表す単語です。
※13 >「イノベーションへの挑戦」参照

04:事業のトランスフォームに向けたDX戦略

 一般的にデジタル化については「デジタイゼーション」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の取組みがあります。「デジタイゼーション」とは、今まで紙で行っていた手続きをデジタルに置き換えることで利便性・迅速性を高めるというものです。当社は、新契約の申込みや給付金請求などにおいて、コロナ禍を契機として一気にデジタル化を進め、ご提案から給付金等の支払いまでデジタル完結できる体制を構築しました。現在、保険加入などの新契約の申込手続きにおいては約9割、給付金請求においては対象となる手続きの約5割がデジタルで手続きされています。

 もう一つの「デジタルトランスフォーメーション(DX)」については、お客さまから得られるデータをいかに活用して保険商品や保険に付帯するプログラム・サービスにつなげていけるか、これが今後の大きな取組みになると考えています。

 従来から保険商品は、膨大な疾病データや死亡データに基づいて開発されてきましたが、今後はそれだけでなく、「よりよく生きる」ための活用に重きを置いて、未来に備えるためのよりよい保険の提供、将来的には加入者への疾病予測、予防を含めた更なる健康増進に向けた取組みを後押しできるサービスの提供を目指していきたいと考えています。さらには、それによって「社会をよりよく変えていく」ということができれば、真の事業トランスフォーム、つまり、「CSV=Creating Shared Value=共通価値の創造」※14を果たせるといえるでしょう。

※14 CSVとは「Creating Shared Value」の略語で、「共有価値の創造」を意味しており、本業で社会課題に取り組み、「社会問題の解決」と「企業価値の向上」を両立させることを指しています。
> 「CSVプロジェクト」参照

05:社会課題の解決に貢献し、持続的な企業価値の向上へ

 2021年度は、ウェルビーイングの浸透に向けて、力強い一歩を踏み出した1年となりました。中期経営計画については今年が3カ年の最終年度になりますが、お客さま数や保有契約年換算保険料など、掲げた目標を概ね達成するペースで推移しています。2022年度も、新型コロナへの対応を継続しつつ、「人とデジタル」でお客さまを支え、ウェルビーイングに貢献することで、「なくてはならない」生命保険会社の実現を目指していきます。

 また、2023年度からスタートする新しい中期経営計画は、これまでの3年という期間にこだわらず、中長期ビジョンに向けて何を成していくべきか、そのために必要な計画期間はどれくらいか、といった原点から議論を深めています。

 当社はお客さまからお預かりした保険料を安定的かつ有益に運用する責任があります。同時に、30数兆円に及ぶ資産を持つ機関投資家として「責任投資」※15の観点から、中長期的なサステナブル社会の実現に向けた貢献が求められています。また、サステナビリティ経営の一環として、2050年のカーボンニュートラルを宣言し、2030年の中間目標も公表していますが、今のスピード感で良いのか、もう一度見定めていく必要があると思っています。と同時に、当社自身やグループ企業が排出するCO2の削減をどのようなスピード感で進めるべきなのかについても見直していかなければなりません。脱炭素社会の実現に向けては、グローバルに連携して取り組むことも重要であることから、2021年9月には金融向け炭素会計パートナーシップ(PCAF)に国内生命保険会社として初めて加盟するとともに、1 0月には、2 0 5 0 年ネットゼロを目指す国際イニシアティブ(Net-Zero Asset Owner Alliance)にも加盟しました。責任投資を通じて社会をよりよい方向に動かしていく、この大きな取組みに積極的に関わっていきたいと考えています。

 住友グループには「自利利他公私一如」という共通する精神があります。これは、自分たちの利だけでなく他を利することが大切で、公と私は一体であるべきという精神です。今般、この精神を踏まえた「サステナビリティ経営方針」を定めましたが、最も肝心なことは、これを「単なる宣言、方針」で終わらせるのではなく、全役職員が果たすべき「使命」として、「行動」し続けることです。この観点から、今後も持続可能な未来に向けて、社会課題の解決と企業価値の向上を一体で実現していくために全力を尽くしていきます。

2022 社長トップメッセージ 表①

※15 ESG投融資とスチュワードシップ活動の総称です
>「責任投資の取組み」参照
※16 住友生命+メディケア生命の合算。お客さま数(保有契約件数)は、個人保険・個人年金保険の件数で、業務提携先(三井住友海上、エヌエヌ生命、ソニー生命)から提供を受けている商品を含む。
※17 海外事業(シメトラ他)の合算。

2022 社長トップメッセージ 表2

※18 業務委託先であるティーペック株式会社が提供するサービスであり、住友生命の提供する保険またはサービスではありません。