エグゼクティブ・フェロー対談
Profile
エグゼクティブ·フェロー 兼 人財共育本部事務局長
山田 哲之
保険販売、人事、教育部門など様々な部門で管理職を経験してきており、新規取組みの立上げも多く主導。なかでも人財共育の分野で多くの経験と高い実績を有している。
エグゼクティブ·フェロー デジタル共創オフィサー
岸 和良
入社以来、一貫して情報システム部門で経験を重ね、健康増進型保険“住友生命「Vitality」”発売時にはシステム開発責任者を担当。デジタル分野で突出した能力と実績を有している。
「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」の実現へ「人財共育」×「デジタル&データ」の連携を深め、新たな価値創造を進めていきます。
社会環境が加速度的に変化し、ビジネスの高度化も進んでいる昨今、住友生命のプレゼンスを一層向上させていくためには、専門的な知見を持つ人財による全社的見地からの業務執行の必要性が高まっています。そこで当社では、社内外を問わず高度専門人財を登用し、執行役員と同等の権限を付与するエグゼクティブ·フェロー制度を導入し、2023年4月1日付で初のエグゼクティブ·フェロー2名を選任しました。山田、岸の両氏が中心となって「人財共育」「デジタル&データ」を推進することで、「住友生命グループVision2030」に掲げる「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」を目指す取組みを深化させていきます。
ウェルビーイング領域の拡大へ
Q:住友生命グループVision2030」に掲げる「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」とは、どのような姿と捉えていますか。
山田 ウェルビーイングの定義は難しいのですが、端的に言うなら「持続的な幸せ」であると捉えています。当社は企業理念「経営の要旨」の第一条に「社会公共の福祉に貢献する」というパーパスを掲げています。この「社会公共の福祉」こそ、まさに一過性ではない「持続的な幸せ」の基盤となるもので、理念とも連動しているものだと感じています。
「持続的な幸せ」という非常に質量の大きな価値に寄与していくには、それこそが自身の使命であるという強固な意志が絶対的に必要になります。その上で自律的に考え、行動でき、なおかつ最新の知識やスキルを有する人財が必要だと痛感しています。そのためにも、まずは経営理念、経営戦略と連動した人財戦略を十分に練ることが重要であると考えています。
岸 私は、ウェルビーイングとは「自由に生きたい」という人間本来の欲求ではないかと思います。当社に限らず、様々な国や企業で「ウェルビーイング」を取り上げるようになったのは、インターネットの出現をきっかけとして、それまでの抑圧された世界からの解放を望む声が表出したものではないでしょうか。インターネットによって膨大な情報に触れ、その中から自分の欲しいものを選ぶことができるようになったことで、消費者の価値観もビジネスのあり方も大きな影響を受けていると感じています。
そう考えると、私たちとしても今までの延長線上ではなく、新たな時代にふさわしい価値創出が求められているのだと気の引き締まる思いです。
エグゼクティブ·フェローとしての役割
Q:ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」を実現するために、エグゼクティブ・フェローとしてどのような役割を果たしていきたいとお考えですか。
山田 経営理念、経営戦略にある考え方をどのように人財戦略に落とし込んでいくかが、重要テーマだと認識しています。私はこれまで、数多くの支社·本社部門で管理職を経験し、新規の取組みの立上げも多く主導してきました。それぞれ業務の内容や目的は違えども、共通して重視してきたことは、長期的な視野からの人財育成でした。対症療法的な処置では、いったんは業績が上向いたとしても、長続きはしませんから。こうした多くの部門を経験する中で培った視点や知見をもって、社会·お客さま·職員のウェルビーイングの実現に寄与したいと考えています。
岸 私は山田さんとは対照的で、入社以来、一貫してシステム部門でキャリアを積み、デジタル·データ面から会社や世の中の動きを定点的に見てきました。社内業務にとどまらず、多様な学会に参加し、研究発表を行うなど、社外活動も積極的に行ってきました。
社内においては、約20年前にスタートした銀行窓口での保険販売をはじめ、来店型の保険ショップの展開など、新たなチャネルの立上げに伴うシステム設計のほぼすべてに携わってきました。そうした私の立場を決定的にしたのは、健康増進型保険“住友生命「Vitality」”の導入経験でした。「Vitality」は、当時はまだ珍しいスマートフォンアプリとの連動などデジタルを活用したシステムだったため、社外活動で培った人脈を活かして情報を収集し、経営陣に伝える役割も果たしました。そうした経緯もあり、当社でのデジタル&データ活用の重要性への認識も高まったことが、自分がエグゼクティブ·フェローに選ばれた理由だと思っています。ですから私の果たすべき役割とは、デジタル&データのさらなる活用の推進と、それを深掘りしていくための後進育成であると理解しています。
人財共育とデジタル&データの連携
Q:「 スミセイ中期経営計画2025」において2つの推進エンジンと位置付けられている「人財共育」と「デジタル&データ」は、互いにどう連携していくのでしょうか。
山田 経営戦略と人財戦略の連動というのが、まさに私に課された最大のミッションだと思っています。「スミセイ中期経営計画2025」では、「ウェルビーイングデザインへの進化」「新規領域でのイノベーションの実現」「収益構造改革」「グループ戦略」という4つの取組みからウェルビーイング領域を拡大していくことを表明しています。これをより血の通ったものにするためには、職員一人ひとりが、「今なぜこれらのことに取り組む必要があるのか」という背景や目的まで理解した上で、「自分は何ができるのか」と自分ごととして考え、行動できるようにする必要があり、それこそが人財戦略であると言えます。
いざ行動しようという時には、デジタル&データの活用は必要不可欠となってきます。さらには、あらかじめデジタルありきで発想し、業務やサービスのフレームとなるシステム企画を担う、いわゆるDX人財の育成も求められていると考えています。
岸 デジタル&データは戦略の「てこ」となり得るものです。例えば戦略を進める上で、現状の2 倍の営業職員がいればもっと違う戦い方ができると思ったとしても、人数を増やすことはそう簡単にできることではありません。このリソースで最善の戦いをするにはどうすればいいかと考えると、デジタル&データを活用して業務効率やお客さまへの提供価値を高めていくということになるでしょう。
私はデジタル&データを活用することで、これまで100できたことを、1,000にも10,000にもできると思っています。ただそれには、「てこ」であるデジタル&データを活用する人財の力量も当然のことながら高める必要があります。私たちシステム設計、運用を担う人財がビジネスを学び、同時にビジネスを担う人財がデジタルを学び、連携を深めていくことが、「てこ」の力を最大化し、エンジンとしての推進力を高めることにつながります。
ただ、ビジネス部門の人財について言えば、デジタル技術に精通する必要はなく、それよりもデジタルを活用することでお客さまにどのような価値を提供し、業務を効率化するのか―つまり、ビジネスを設計し、デジタル&データを「てこ」として活用できるような能力開発がメインとなると思います。
山田 デジタル&データ活用が取組みを進めるエンジンとなることは明らかですから、営業職員も含めて、全員が一定のデジタルに関する知見や意識を持ち、活用できるスキルを磨くことは必要不可欠となってきていると、私も考えています。そのための新たな育成プログラムの導入や人事制度の改革なども視野に入れ、検討を重ねているところです。
一方でシステム企画を担うDX人財については、より強力なカリキュラムを用意することを計画しています。さらに新規ビジネスを創出するイノベーション人財の育成·確保にも目を向け、様々なアプローチをしていきたいと考えています。
現状課題とその解決に向けて
Q:今後、様々な取組みを進める中で、課題として認識していることは何ですか。また、それを解決するために必要なことは何だとお考えですか。
岸 多くの職員はデジタル&データに関する知識や経験が乏しく、これまで身に付けてきたものとは異質なものを求められている状況です。そのため、前に進もうという気持ちは間違いなくあるものの、自信を持てず、最初の一歩を踏み出せていないことが大きな課題だと感じています。最初の一歩さえ踏み出しさえすれば、おのずと道は開け、様々な経験を重ねる中で知識もスキルもついてくるものだということは、私自身、「Vitality」導入時に体感していることでもあります。まずは一歩を踏み出してみようと思ってもらえるように、私のこうした成功体験を後進となる職員に伝えていくことも、自身の役割であると考えています。
また、経験の積み方についても、「10回チャレンジして1回成功すればよい」というのではなく、「失敗を2 回に減らして8 回の成功を生む」ような、確度を上げることを意識したメカニズムを構築していく必要があると考えています。
山田 「なくてはならない保険会社グループ」を大命題として掲げる当社にとって、社会やお客さま、すなわち「社外」に目を向けることが非常に重要だと考えています。そのために、まず「to be」「will」「can」を持つ必要があります。目指す姿である「tobe」があれば、そこに向かって進もうというワクワクした気持ち「will」が生まれます。これは岸さんの言われた「自信」にも通じる部分です。「will」を持って取り組む中で、できること「can」を増やしていくことができ、また新たな「tobe」も見えてきます。この循環を強化していくことで、個人の自信はもちろん、社会やお客さまへの提供価値の向上にもつながっていきます。
こうした個人の「tobe」「will」「can」の循環がスムーズに行われるよう、支えていくのが会社の役割です。個人が会社に従属するという関係ではなく、個人の自律的な価値向上活動を会社が支える対等な関係にしていくことが、私たちが今取り組むべき課題だと考えています。
岸 自社だけで様々な課題を解決することは難しく、新しいネットワークを通じて多様な知を結び付け、価値創出をしていくことが求められる時代です。当社には明確な問題意識を持って、解決に向けて行動を起こしている社員もたくさんいます。業務やサービスの価値を高めることにつながるこうした行動をより増やし、社内外に拡げていくことが、山田さんの言われる通り、会社の役割だと私も思います。そうすることで、昨今のビジネスにおいて重要な「共創」につながっていくのです。
山田 何よりもチャレンジすること、まず一歩を踏み出してほしいと心から願っています。そしてチャレンジする人を会社は全力で支援する、そういう誰もが批判を恐れず、思い切りチャレンジできる環境をつくっていきたいと思います。